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ダイバージェンス — 価格とモメンタムのずれ

regularダイバージェンスには罠が多く、トレンドフォローのエントリーにはhiddenダイバージェンスだけを使います。

ダイバージェンスという一語は、本来まったく性質の違う4つのシグナルをひとまとめにしてしまいます。Regularは、価格の新高値・新安値とオシレーターの弱まりが食い違う反転警戒シグナルです。一方、hiddenは価格構造ではトレンドが維持されているのに、オシレーターだけがより深く低下するトレンド再開シグナルです。

多くのトレーディング教科書は、この4種類をまとめて「ダイバージェンス」と呼びます。そのため読者は、トレンドに逆らって賭けるシグナルと、トレンド方向に乗るシグナルを同じ道具として扱ってしまいます。

この混同の代償は大きいです。Regularダイバージェンスはトレンド逆張りであり、hiddenダイバージェンスはトレンド順張りです。同じRSIのパターン認識ツールでどちらも検出できますが、エントリーの重み、タイミング、必要な相場環境はまったく違います。4種類を分けて見なければ、どの環境でどのダイバージェンスが機能するのかを追跡できません。

Regularは警戒、hiddenはトレンド再開です
Regularは警戒、hiddenはトレンド再開ですRegular bearishは警戒シグナルとしてのみ扱い、hidden bullishはRSIが50ラインを回復した後のエントリー候補として見ます。

4種類のマトリクス — 価格構造 × オシレーター方向

マトリクスで見ると単純です。行は価格の方向です。新高値・新安値ならregular、高値切り下げ・安値切り上げならhiddenです。列はオシレーターの方向です。同じオシレーターのダイバージェンスでも、価格がどこにあるかによって意味は正反対になります。

  • Regular bearish: 価格は新高値をつけているのに、オシレーターは高値を切り下げているケースです。上昇トレンドが反転する可能性を示します。モメンタム低下の警告ではありますが、強いトレンドでは2回、3回と繰り返されてもトレンドが続くことがよくあります。
  • Regular bullish: 価格は新安値をつけているのに、オシレーターは安値を切り上げているケースです。下落トレンドが反転する可能性を示します。弱気相場の終盤でよく見られますが、これだけで入ると最後の大きな下げに巻き込まれます。
  • Hidden bullish: 価格は直近安値より高い安値をつけており(上昇トレンドを維持)、オシレーターは直近安値より低い安値をつけているケースです。上昇トレンド内の押し目が、オシレーター上ではより深く沈んだという意味なので、短期の売り圧力が十分に出尽くした場面として見ます。
  • Hidden bearish: 価格は直近高値より低い高値をつけており(下落トレンドを維持)、オシレーターは直近高値より高い高値をつけているケースです。下落トレンド内の戻りが、オシレーター上ではより高く反発したという意味なので、ショートを取り直す場面として見ます。

このマトリクスの要点は、トレンドフォローのエントリーに使えるのはhiddenダイバージェンスだけだという点です。Regularダイバージェンスはトレンドの終わりを取りにいく試みなので、ダマシの比率が高くなります。マトリクスは、相場環境ごとにどれを採用し、どれを捨てるかを選別するためのものです。

ElderのClass A・B・C — ダマシはどこで生まれるのか

Alexander Elderが*Trading for a Living*で導入した分類は、ダマシの比率を下げるうえで決定的です。Elderはregularダイバージェンスを3つの等級に分けました。

  • Class A: 2つの山または谷がどちらもオシレーターの極端な水準(RSIなら70以上の高値、30以下の安値)に到達しているダイバージェンスです。2つのシグナルがどちらもモメンタム領域の端から出ている点に強い重みがあります。
  • Class B: 片方だけが極端な水準に到達し、もう片方は中立領域(40〜60)にとどまるダイバージェンスです。信頼度は明確に下がります。
  • Class C: 2つとも中立領域で起きる「ダイバージェンス」です。実質的にはノイズであり、パターンマッチングの使い方を誤っているケースに近いです。

多くのトレーディング本に載っているダイバージェンスの図は、Class Aのきれいな例です。ところが実際のチャートで人が見つけるダイバージェンスの大半はClass BかCです。2つのローソク足を任意に選んで線を引けてしまう余地があるからです。バックテストの結論では、ダマシの60%以上はClass BとCから生まれます。

エントリーに使うダイバージェンスはClass Aだけに限定すべきです。2つの山または谷のうち片方でもRSI 70または30の領域外にあるなら捨てます。このゲートひとつだけで、regularダイバージェンスのダマシの半分以上をエントリー判断の段階で遮断できます。

Elder Classの要点は極端な水準にあるかどうかです
Elder Classの要点は極端な水準にあるかどうかです2つのオシレーター安値がどちらも極端な水準ならA、片方だけならB、両方とも中立ならCと見ます。

Hiddenダイバージェンスのメカニズム — 2つのシグナルの役割分担

Hiddenダイバージェンスをトレンドフォローに使える理由は、2つのシグナルの役割が異なるからです。

価格構造の「安値切り上げ」は、トレンドがまだ維持されているというシグナルであり、買い手が直近安値に届く前に再び買っていることを意味します。同じ時点でオシレーターが「安値切り下げ」になっていることは、押し目の間に売りが十分に進んだというシグナルで、短期的な売り圧力が尽きた可能性を示します。2つのシグナルは互いに矛盾せず、同じ方向を指しています。どちらも、買い手がまもなく戻ってくる可能性を示しています。

Regularダイバージェンスは正反対です。価格の新高値とオシレーターの高値切り下げは、互いに矛盾する2つのシグナルなので、どちらを信じるかをマトリクスの中で決める必要があります。この衝突が解消されるまでには時間がかかり、その間に価格はさらに上値を伸ばすことがあります。

この違いがエントリータイミングを決めます。Hiddenダイバージェンスでは、オシレーターが回復するローソク足(例: 終値ベースでRSIが50を上回って回復した足)でそのままエントリーできます。regularダイバージェンスでは、価格構造が崩れること(上昇トレンドなら直近安値を終値で割り込むこと)を追加で待ってから入ります。ダイバージェンスそのものは警戒シグナルにとどまります。

Hidden Bullishのエントリーセットアップ

> GOOGLの日足が200 EMAの上にあり、ADXが22以上の上昇トレンドにあるとします。

> 価格が押し目を形成し、直近安値(168ドル)より高い新しい安値(172ドル)をつけます。

> 2つの安値のRSIを見ると、直近(38)より新しい安値(31)のほうが明確に低くなっています(hidden bullish)。

> 終値ベースでRSIが50を上回って回復した足の終値で買いエントリー。

> 損切りは押し目安値(172ドル)の下。

> 価格が押し目安値を終値で割り込むなら、トレンド自体が崩れたため、見立てが間違っていたと判断します。

重要なのは、RSIが50を回復する足でそのまま入ることです。この足でそのまま入ります。Hiddenダイバージェンスはトレンド方向のシグナルで価格構造はすでに確認済みなので、価格構造が崩れるのを追加確認として待つ必要がありません。そのため、50ライン回復が最後のゲートになります。

下落トレンドのhidden bearishは、同じパターンを反転して使います。

Hidden bullishでは安値切り上げとRSI 50回復を見ます
Hidden bullishでは安値切り上げとRSI 50回復を見ます価格は安値を切り上げてトレンドを守り、RSIはより深く落ち込んだ後に50ラインを回復する必要があります。

指標ごとのダイバージェンスの重み

同じダイバージェンスのパターンでも、どのオシレーターで捉えるかによってシグナルの信頼度は変わります。一般的にはMACDが最も信頼性が高く、次にRSI、Stochasticが最も弱いと見ます。

MACDダイバージェンスの信頼性が最も高い理由は、2つの期間(12 EMAと26 EMA)の差から生まれるためです。2つの期間の両方でモメンタムが落ちるパターンは、トレンド自体が弱まる段階を示し、単なる過熱感の解消では終わりません。RSIは1つの期間(14本)の正規化されたモメンタムなので、2つの期間を比較するMACDより情報量が少なくなります。Stochasticはノイズが最も多く、ダイバージェンスが頻繁に出すぎるため、毎回シグナルとして受け取ると偽陽性に埋もれます。

実用上の結論は、セットアップごとに使う指標をひとつに決めることです。HiddenダイバージェンスのエントリーにはRSIが無難です(50ラインが明確なトリガーになります)。Regularダイバージェンスの警戒にはMACDのほうが信頼性が高いです。ひとつのセットアップで2つの指標のダイバージェンスを同時に見ると、たいてい同じシグナルを2回受け取るだけで、情報量はほとんど増えません。

同じダイバージェンスでもMACD・RSI・Stochasticの順に信頼度が変わります

VIXダイバージェンス — 市場全体のモメンタムを読む変形

ダイバージェンスの特殊な変形のひとつが、VIXとSPXのダイバージェンスです。SPXが新高値をつけている一方で、VIXが直近のSPX高値時より高い安値にとどまるパターンで、市場が新高値でもヘッジ需要であるプットオプションを減らせていないことを示します。

このダイバージェンスは、RSIダイバージェンスより重みのあるシグナルです。RSIは価格そのもののモメンタムですが、VIXとSPXのダイバージェンスは市場参加者がリスクをどう感じているかを示すからです。市場が警戒感が残るなかで新高値をつけているなら、その新高値は弱いものです。

IWM(ラッセル2000)が2024年11月に新高値をつけたとき、VIXは直近のSPX高値時より明確に高い安値を維持していました。その新高値の後、12月に大きな調整が始まりました。VIXダイバージェンスは、通常のダイバージェンス・マトリクスの上にもう一段重ねる、市場全体を確認するための道具として見ます。

指数は新高値でもVIXが高い安値を維持し、警戒感が残る弱い高値です

2つのゲート — タイムフレームの階層と終値確定

ダイバージェンスのエントリーセットアップを堅くするには、シグナルそのものに加えて、さらに2つのゲートを通す必要があります。

  • タイムフレームの階層: ダイバージェンスの信頼度は、発生したタイムフレームが大きいほど高くなります。日足や週足のhiddenダイバージェンスが最も安定しており、5分足や15分足のダイバージェンスはノイズに近いです。短いタイムフレームのダイバージェンスは、2段階上のタイムフレームのトレンド方向とそろっているときだけ意味を持ちます。
  • 完成した足での確定: ダイバージェンスは2本目の足が確定して初めて成立します。進行中の足のオシレーター値でダイバージェンスを引いてエントリーすると、足が確定する時点でパターンが消えることがあります。そのため、終値が確定してから入る必要があります。
マトリクスはregularとhiddenを分けて考えます
マトリクスはregularとhiddenを分けて考えますRegularは反転警戒、hiddenはトレンド再開候補です。トレンドフォローのエントリーでは、hiddenの2マスを優先します。