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資金調達率 — 市場参加者の偏りを読む

資金調達率は単なる手数料ではありません。市場参加者がどちら側に過度に偏っているかを示す数値であり、極端に跳ね上がった資金調達率は、その方向のポジションが清算されやすい局面にあることを示します。

無期限先物(Perpetual Futures)には満期がありません。満期がなければ、先物価格は現物価格から際限なく乖離し得ます。その乖離を抑える仕組みが資金調達率(Funding Rate)です。先物価格が現物より高ければロングがショートに手数料を支払い、低ければショートがロングに支払います。Binanceでは8時間ごとに決済されます。

この仕組みは、偏った側を引き戻す方向に働きます。ロングが集中して先物が現物より割高になると、ロングは8時間ごとに手数料を支払う必要があるため、追加の買いが抑えられ、ショート側が有利になります。その圧力が先物価格を再び現物価格へ引き寄せます。

多くのトレーダーは、資金調達料を単に保有中に差し引かれる手数料として見ています。減らせるなら減らしたい、避けられるなら避けたいコストという扱いです。資金調達率の本当の使い道は別にあります。資金調達率がどちらに、どれほど偏っているかは、いま市場参加者がどこに過度に集中しているかを示します。そして、一方向へ極端に偏った場所こそ、次の清算が始まりやすい場所です。

先物が現物より割高なら資金調達率はプラスとなり、ロングがショートに支払う

資金調達率は無期限先物を現物価格につなぎ留める仕組み

資金調達率は、先物と現物の価格差から生まれます。先物が現物より高ければ、そのプレミアム分だけ資金調達率はプラスになり、ロングがショートに支払います。反対に、先物が現物より安ければ資金調達率はマイナスになり、ショートがロングに支払います。手数料を支払う側は、常に偏っている側です。

通常の市場では、資金調達率は0.01%/8h前後の小さな値です。1日3回なら約0.03%です。この値が大きく広がるということは、一方のポジションがそれだけ集中し、先物価格を現物価格から大きく押し離したという意味です。資金調達率の符号はどちら側に偏っているかを、数値の大きさはどれほど偏っているかを教えてくれます。

資金調達率は2つの要素で決まります。ひとつは先物と現物の価格差であるプレミアム、もうひとつは固定された基準金利(通常0.01%/8h)です。市場が均衡していれば資金調達率はその基準金利付近にありますが、一方向に偏るほどプレミアム部分が大きくなり、資金調達率もその方向へ広がります。資金調達率が0.01%からどれだけ離れているかが、そのまま偏りの大きさです。

資金調達率は市場参加者の偏りを映す

資金調達率を、人々がどこに賭けているかを見る窓として使うと、その意味がはっきりします。資金調達率が大幅なプラスということは、多数がレバレッジをかけてロングを持ち、そのロングを維持するために進んで手数料を払っているということです。市場参加者が一方向に詰まり切っているサインです。

問題は、市場参加者が一方に詰まり切ると、その方向にさらに買う人が少なくなることです。新たな買いが枯れると、小さな下落でも価格は簡単に押され、レバレッジで入ったロングはすぐに清算価格へ近づきます。そのため、極端なプラスの資金調達率は、天井が近いサインとして読まれることがよくあります。

暗号資産でこの偏りが特に大きく出るのは、誰でも高いレバレッジを使いやすいからです。10倍、20倍のレバレッジが珍しくないため、市場参加者が一方向に集中すると、わずかな価格変動でも大規模な清算につながります。

資金調達率だけでは、全体像の半分しか見えません。あわせて見るとよいものが2つあります。ロングショート比率と未決済建玉(OI)です。ロングショート比率はロングとショートの人数や金額の比率を示し、資金調達率と同じ方向に偏っていれば、偏りはより明確になります。

未決済建玉は、市場に残っている未決済の先物契約の総量です。OIが急速に増え、資金調達率まで高くなっているなら、新たなレバレッジが一方向に急速に積み上がっているということです。その分、清算され得る量も大きくなります。資金調達率、ロングショート比率、OIが同じ方向を指しているとき、偏りは最も危険になります。

極端な資金調達率は清算の燃料になる

2024年3月がその例です。BTCが52,000ドルから73,777ドルまで1カ月で上昇する間、資金調達率は通常の8倍を超える0.088%/8hまで急騰しました。ほぼ全員がレバレッジをかけてロングを持ち、そのロングを維持するために1日0.26%ずつ手数料を支払っていたということです。

このように一方向へ詰まり切った局面では、小さな下落が出ただけでもレバレッジロングが連鎖的に清算され、大きな下落へ広がります。実際にBTCは3月中旬に73,777ドルで高値を付けたあと、数週間かけて20%超下落しました。極端な資金調達率そのものが下落を起こすわけではありませんが、下落が始まったとき、それを大きな清算へ拡大させる燃料になります。

清算が始まると、資金調達率とOIは一緒に動きます。レバレッジロングが強制的に清算されることでOIは急減し、偏っていた資金調達率も急速に通常水準へ戻ります。そのため、極端な資金調達率が突然冷え込むこと自体が、大きな清算が通過した痕跡です。

極端なプラスの資金調達率で一方に積み上がったロングが連鎖清算の燃料になる

マイナスの資金調達率は反対側への偏り

資金調達率がマイナスに下がると、ショートが集中しているという意味です。急落直後の恐怖が強い局面でよく見られます。2024年8月5日、BTCが1日で49,000ドルまで下落した直後、資金調達率は数日間マイナスに転じました。底値圏でショートが集中していたサインであり、その後BTCは数日で62,000ドルを回復しました。

極端なプラスの資金調達率が天井付近でロング清算の燃料になるなら、極端なマイナスの資金調達率は底値付近でショート清算の燃料になります。市場参加者が恐怖に駆られてショートへ偏った場所で価格が少し上がるだけでも、そのショートが連鎖的に清算され、速い反発を生みます。

マイナスの資金調達率は底値圏のショート集中を示し、ショート清算の反発を生む

アルトコインでは資金調達率がより荒く動く

資金調達率の偏りは、アルトコインでははるかに荒く現れます。BTCより流動性が薄く、投機需要が集中しやすいため、アルトの無期限先物の資金調達率はBTCの数倍まで跳ね上がることがあります。0.1%や0.3%/8hといった値が出れば、1日だけで1%前後を手数料として支払う計算です。

そのためアルトでは、資金調達率がより早く極端な水準に達し、清算もより激しく起こります。アルトのロングが一方向に詰まり切った局面でBTCが少し下げるだけでも、アルトはBTCよりはるかに大きく崩れます。アルトをレバレッジで扱うときに、資金調達率をBTC以上に頻繁に、そして保守的に見るべき理由です。

資金調達率は方向を当てる指標ではない

資金調達率が高いからといって、すぐにショートしてはいけません。強いトレンドでは、資金調達率が高いまま、さらにしばらく上昇することもあります。資金調達率が教えてくれるのは、市場参加者が偏っているという事実だけです。その偏りがいつ解消されるかまでは教えてくれません。

2024年3月も、資金調達率は高値を付けるかなり前からすでに高い水準にありました。0.07〜0.08%/8hが何日も続く間にも、価格はさらに上昇しました。資金調達率が高いという理由だけでその時点でショートしていれば、天井が来る前に何度も損切りさせられていたはずです。偏りが解消される瞬間を決めるのは価格です。資金調達率はそのタイミングを教えてくれません。

だからこそ、資金調達率は価格シグナルと一緒に見ます。資金調達率が極端な状態で、価格が初めてトレンドに逆らうシグナルを出したとき、そこでようやく偏りが解け始めたと見ます。前に見た流動性狩りや市場構造の転換シグナルが、極端な資金調達率と同じ場所で重なれば、その反転はより強固になります。

資金調達率は保有コストとして積み上がる

資金調達率は一度だけ見れば小さく見えますが、8時間ごとに差し引かれ、積み上がっていきます。0.088%/8hは1日で0.26%、1カ月なら8%近くになります。高い資金調達率の局面でレバレッジロングを長く持てば、価格が横ばいでも資金調達料だけで口座残高が削られます。

このコストは、反対に収益にもなります。資金調達料を受け取る側でポジションを持てば、価格が横ばいでも8時間ごとに手数料が入ってきます。ただし、資金調達料を受け取るために市場参加者と同じ偏りへ乗ると、受け取る手数料より清算リスクのほうがはるかに大きくなります。資金調達料収入を狙うのは、偏りが弱いときだけです。

資金調達率をどう使うか

  • [ ] 市場参加者を確認する: 資金調達率が通常の何倍まで一方向に振れているかを見ます。極端であるほど、その側に市場参加者が詰まり切っているという意味です。
  • [ ] 価格シグナル: その偏りとは反対方向に、価格構造のシグナル(スイング安値の割り込み、スイープ後の回復など)が出ているかを見ます。
  • [ ] エントリー: 極端な資金調達率と反対方向の価格シグナルが同時に出たとき、偏った側とは逆方向に入ります。
  • [ ] 回避: 資金調達率が極端な側へ追いかけて入らないこと。そこはすでに市場参加者が詰まり切った場所です。
極端な資金調達率と逆方向の価格シグナルが重なったとき、偏った側の逆へ入る

資金調達率は、誰がどれだけ無理をして入っているか、つまりポジションの偏りを示す指標です。価格チャートだけでは見えないその偏りを、資金調達率は数値として見せてくれます。次の記事で扱う連鎖清算では、このように積み上がった偏りが一気に解消されるとき、何が起きるのかを見ていきます。