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一目 — 雲の厚みとねじれ
雲は買い・売りのシグナルではなく、厚みで読む支持・抵抗です。厚い雲は越えにくい壁、薄い雲はたやすく抜ける隙間、色が変わるねじれは流れが転換する位置です。
雲の厚みは二本の先行スパンの間隔である
第1編で見たとおり、雲は先行スパン1と先行スパン2のあいだを埋めた帯です。先行スパン1は転換線と基準線を足して2で割った値で、短期の中心と中期の中心をもう一度平均した線にあたります。先行スパン2は直近52足の高値と安値のちょうど真ん中で、五本の線のなかで最も遅い長期の中心です。
雲の厚みは、この二本の線が開いた間隔そのものです。先行スパン1が先行スパン2よりずっと上にあれば雲は厚くなり、二本が近く寄れば薄くなります。先行スパン1は9足と26足で作った速い均衡、先行スパン2は52足で作った遅い均衡です。二本の間隔は、短期・中期の均衡と長期の均衡がどれだけ離れているかをそのまま映し出します。

二本の線が大きく開くのは、速い均衡と遅い均衡がずいぶん離れた位置にあるということです。価格が一方へ速く押されて短期の中心が遠くまで動き、長期の中心がまだ追いついていない区間で、雲は厚くなります。二つの均衡がふたたび近づけば雲は薄くなります。
厚い雲は重い壁である
厚い雲が支持・抵抗として堅いのは、その区間のなかに二つの時間軸の均衡値がどちらも収まっているからです。価格が厚い雲を上へ通り抜けるには、先行スパン2が捉えた長期の中心と、先行スパン1が捉えた短期の中心を順に越えていかなければなりません。そのあいだに均衡値がびっしり敷き詰められているため、価格は一度に抜けず、なかで一度足を止めます。
価格が厚い雲のなかに入ると、上下どちらの線も遠いため、しばらく閉じ込められて横ばいになることがよくあります。上へ出るには雲の上線まで、下へ抜けるには雲の下線まで距離があるからです。こうして厚い雲は、価格が近づいたときに一度止まる位置になり、入り込めばしばらく閉じ込められて横ばいになる位置にもなります。

上に厚い雲が浮かんでいれば、その下から上がってくる価格は雲の下線でまず止められます。雲が厚いほど上線までの距離が遠く、抜けるのに力と時間がよけいにかかります。下に厚い雲が敷かれていれば、同じやり方で下りてくる価格を受け止めます。
厚みは通過にかかる足の本数である
雲が厚いという言葉には、時間の意味も含まれています。二本の先行スパンが大きく開くには、それだけ価格が一方へ押された足が積み重ならなければなりません。そうして開いた幅をふたたび狭めて通過するにも、やはり足が余計にかかります。厚い雲は、価格が越えるのに足の本数、つまり時間をより多く要求する壁です。
薄い雲は二つの均衡が狭い幅にまとまっているため、価格は少ない足で横切ります。同じ雲でも厚みを足の本数に換算して読めば、価格がその区間に触れたとき何日捕まるかをあらかじめ見積もれます。厚みとは、価格で測った壁の高さであると同時に、その壁を越えるのにかかる足の本数でもあるのです。

薄い雲はたやすく抜ける隙間である
薄い雲は、先行スパン1と先行スパン2が近く寄り、二つの時間軸の均衡がほぼ一か所に集まった区間です。越えるべき均衡値が狭い幅にまとまっているため、価格は厚い雲のようになかで長く止まらず、一度に抜け出します。
だから薄い雲の区間は、突破がたやすい位置と見ます。雲が未来まであらかじめ描かれるという第2編の性質を使えば、前方のどこに薄い雲が置かれているかを、いまの画面で先に読み取れます。価格がその薄い区間に差しかかるころには、たいした抵抗もなく通過する可能性が高いと見ます。
未来に描かれた雲は、すでに確定した過去の値を26足前へ移して置いた投影です。第2編で見たとおり、これは価格がどこへ行くかを予測する線ではありません。これから支持・抵抗の地形がどこに敷かれるかをあらかじめ印した地図です。薄い雲が前方に見えるのは、その位置の壁が浅いという地形の情報であって、価格がそこまで来るかどうかは別の話です。

英語圏は上下だけ見て厚みを取りこぼす
英語圏では雲を、上にあるか下にあるかだけで見て、厚みを見ません。価格が雲の上へ抜けたという事実だけで突破と認めます。この読み方では、薄い雲を軽く越えた弱い突破と、厚い雲を力いっぱい抜いた堅い突破が、同じシグナルに束ねられてしまいます。
薄い雲を越えたのは、越えるべき壁がそもそも浅かっただけで、それ自体では堅い突破と見ません。厚みで読めば、エントリー位置の信頼度がはっきりします。厚い雲を力いっぱい抜いて上がった突破は、大きな抵抗に打ち勝った堅い位置と見ます。薄い雲を軽く越えた位置は単独では信頼せず、第3編で見た遅行スパンの好転と価格の雲突破がそろって噛み合ったときだけ、セットアップとして認めます。
厚みはATRで見積もる
雲が厚いか薄いかを判断する絶対の基準はありません。同じ幅でも、変動性の大きい銘柄では薄いほうに、穏やかな銘柄では厚いほうに傾きます。一日に大きく動く銘柄なら、たいていの雲は半日で通過しますが、穏やかな銘柄では同じ幅が何日も持ちこたえる壁になります。
だから厚みは、その銘柄の変動性に照らして見積もります。ATRは一本の足がふだんどれだけ動くかを測る値なので、雲の厚みがATRの何倍かを見れば、銘柄が違っても同じ物差しで測れます。おおむね雲の厚みがATRの三、四倍を超えれば、価格が何本もの足をかけて越える厚い壁、ATR一倍にも満たなければ一本の足で通過する薄い隙間と見ます。この倍数は決まった標準値ではなく、銘柄と時間軸に合わせて取るおおよその目安です。

厚みを損切り幅と建玉の大きさに連動させる
ATRで測った厚みは、そのままエントリー判断と損切り幅、建玉の大きさの決定につながります。厚みがATRの三、四倍を超える壁が上に立ちはだかっていれば、その手前で突破を追いかけません。価格が雲の下線に触れたあと、なかで長く横ばいになる公算が大きく、追いかけて入ればその横ばいに捕まるからです。
損切り幅も厚みに合わせます。厚い雲をあいだに挟んでエントリーすると、価格が雲の反対側の線まで揺れる余地があるため、損切りを雲の厚み分だけたっぷり置かなければ振り落とされます。損切り幅が広がった分、一度に賭ける建玉の大きさは減らし、損失金額を同じ水準にそろえます。薄い雲の手前では損切りを狭く取ってよいので、同じ損失金額でより大きな建玉を乗せられます。

色が変わるねじれは局面が変わる位置である
先行スパン1と先行スパン2がたがいに交差する位置が雲のねじれです。先行スパン1が先行スパン2の上にあるあいだは雲を一つの色で塗り、下へ下がって二本の線が逆転すれば別の色に切り替えます。ねじれは、速い均衡と遅い均衡の上下が逆転する地点です。その位置で雲の色が変わり、流れの局面が一度転換します。
ねじれの位置では二本の先行スパンが出会うため、雲の厚みは0に近づきます。最も薄くなるこの地点は、価格が最もたやすく通過する位置でもあります。ねじれのあたりで雲は、支持・抵抗として最も弱くなります。

ねじれが重要なのは、第2編で見たあらかじめ描かれる性質と噛み合うからです。雲は26足前に描かれるので、前方に置かれるねじれの位置は、いまの画面で先に見えています。流れの局面が変わる時点の候補が未来のどのあたりにあるかを、カレンダーに前もって印しておくわけです。厚い雲が前方でしだいに薄くなり、ねじれる形が見えてくれば、その時点を流れが一度転換する位置として警戒します。
ねじれはそれ自体ではエントリーのシグナルではありません。色が変わったからといって、すぐ売買する位置と見てはいけません。保有中の建玉をいつまで引っ張るかを見積もり、流れの転換が迫った時間帯を前もって警戒するためのシグナルです。エントリーは、第3編で見た遅行スパンの確認と価格の雲突破がそろって噛み合ったときに取ります。
下へ向かう流れは逆さに読む
ここまでは上へ向かう流れを基準に見てきました。下りる流れでは、同じ読みを上下に入れ替えます。下に厚い雲が敷かれていれば、それが下りる価格を受け止める重い底になるため、その壁の手前で下落を追いかけません。価格が雲の上線に触れたあと、なかで長く横ばいになりうるので、追いかけたショートはその横ばいに捕まります。
下に薄い雲だけが敷かれていれば、受け止める底が浅く、価格はたやすく抜けて下りていきます。未来の側の薄い区間を先に読んでおけば、下落がどこで速まるかを見積もれます。先行スパン1が先行スパン2の下へ下がり、雲が弱気の色にねじれる位置は、弱気の局面へ変わる時点の候補です。エントリーは、遅行スパンが26足前の価格帯の下へ抜け、価格が雲の下に位置を定める、この二つが噛み合った位置で取ります。