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SMA — 単純移動平均

200日線を単なるトレンド判定ラインとして見るのではなく、価格がその線をどう通過したかでトレンドの強さを判断します。

価格が200日線の上にあれば強気相場、下にあれば弱気相場。ゴールデンクロスが出たら買い。SMAを扱う記事のほとんどは、この二文に集約されます。一本のラインで強気・弱気を分けられるほどシグナルが単純なら、市場は200日線だけで割り切れるはずですが、実際のチャートはそう動きません。

200日線の意味を分けるのは、通過がどのように起きたかです。SPYは2023年1月、200日線の396ドルを大きな陽線2本で突破し、出来高も同時に増えました。その水準は同年5月と10月の押し目(Pullback)で、きれいな反発ポイントになりました。一方、2022年8月のSPYは一度200日線を上抜けましたが、終値は200日線の上下を5営業日にわたって行き来し、その通過は2週間以内に無効となって、価格は同年9〜10月の安値へ戻っていきました。同じ資産の同じ200日線が、正反対に機能したのです。

この違いが、SMAの使い方を変えます。まず価格が200日線をどう通過したかを分類し、その形が定まってからエントリーを検討してください。通過の形を見ずに上下だけで入ると、同じ道具を使っているのに毎回違う結果になります。

200日線の通過はまず形を見る
200日線の通過はまず形を見る一気に上へ定着するブレイクと、上下を往復するホイップソーは、同じ200日線の通過でも別のシグナルとして扱います。

ゴールデンクロスの実際のバックテストは、メディアが語るほど強くない

50/200のゴールデンクロスを自分で一度検証してみると、メディアが描くイメージとは違う結果が出ます。SPYの日足では、ゴールデンクロス直後30日の平均リターンは一桁台前半%の弱いプラス、デッドクロス直後30日の平均はゼロ近辺の弱いマイナス程度です。方向性を持つ弱いプラスのシグナルではありますが、これだけをエントリーシグナルとして使うには不十分です。

より重要なのは、弱気相場の反発局面で出る偽のゴールデンクロスの割合です。2001年、2008年、2020年の大きな弱気相場で出た50/200ゴールデンクロスのうち、半分近くが数日から数週間以内に再びデッドクロスへ戻りました。BTCやETHではノイズはさらに大きくなります。日足50/200クロス直後1カ月の平均変動が、他の時期の平均と統計的に区別できない区間も珍しくありません。

この事実を受け入れると、ゴールデンクロスをどこに位置づけるべきかが明確になります。ゴールデンクロスとデッドクロスは、現在のトレンドがどちら向きかを示す方向表示であり、エントリーは別に判断します。デッドクロスの状態では買いセットアップのサイズを通常の半分に落とし、ゴールデンクロスの状態では通常サイズで入るようにすれば、弱気相場で出るホイップソー(Whipsaw)が自然にふるい落とされます。正確なエントリー位置は、価格構造と通過の形で別に決まります。

ゴールデンクロスはトレンド方向を示す
ゴールデンクロスはトレンド方向を示す30日リターンの分布は弱いプラスの期待値を示すだけなので、エントリーは価格構造で別に判断する必要があります。

まず200日線が機能する資産を選別する

200日線が動的な支持・抵抗として機能するには、十分に多くの市場参加者がその価格帯を意識している必要があります。機関投資家の資金比率が高い資産(SPY、QQQ、大型優良株)では、200日線付近がきれいな押し目になりやすい傾向があります。反対に、時価総額の小さいアルトコインや参加者構成が分散した資産では、200日線が単なる数字に終わることが多くあります。

選別方法はシンプルです。その資産の日足1〜2年分のチャートを開き、価格が200日線付近まで調整した地点を印してください。明確な反発が3回以上出ていれば、200日線が機能する資産と見なし、2回以下ならいったん疑います。SPYは通常、四半期に一度ほど200日線を試し、その多くで明瞭に反発します。AAPLの2023〜2024年の上昇相場でも、200日線は動的サポートとして2回正確に機能しました。一方、時価総額の小さいアルトコインでは、200日線の上下を毎週のように往復するケースがよくあります。

この点検をせずに200日線をセットアップの中心ラインとして使うのは、その資産で確認されていない統計に賭けるのと同じです。

200日線が意識される資産だけを選ぶ
200日線が意識される資産だけを選ぶ繰り返し反発する資産と、頻繁な交差だけが出る資産を先に分けることで、200日線をセットアップラインとして使えます。

通過は三つの形に分かれる

資産が200日線の機能チェックを通過したら、次は通過の形を分類します。

  • ブレイク型: 大きなローソク足1〜2本で200日線を明確に上抜け、その後数日間、終値が上に保たれます。出来高も同時に増えていれば、その後200日線が動的サポートとして機能する確率が高まります。代表例は、SPYが2023年1月に396ドルの200日線を大きな陽線で突破したあと、5月と10月の2回の押し目で正確に反発ポイントになったケースです。
  • 往復型: 価格が200日線の上下を数日ずつ交互に往復します。終値が上で引けた翌日に下へ落ちる流れが繰り返され、このパターンが2週間以上続くと、その資産における200日線は実質的に意味を失います。単純な通過シグナルだけを見て入ったエントリーは、ほぼ損切りで終わります。
  • 反復テスト型: 価格が200日線の上に定着したあと、2回、3回と調整してその付近で反発した履歴が積み上がります。この形ができると、200日線は市場が合意した分岐点になります。

同じ通過でも、形が違えばその後の値動きは変わります。形が定まる前に入るのは、結果が読めない確率ゲームに近い行為です。

通過後の経路がセットアップを決める
通過後の経路がセットアップを決めるブレイク型、往復型、反復テスト型を分けると、同じ200日線でもエントリー、見送り、再テスト待ちに分かれます。

三回目の押し目が最も堅い

200日線が機能する資産がブレイク型で200日線を通過し、その後2回の押し目がその線付近で反発した履歴まで積み上がったなら、三回目の押し目が最も信頼度の高いエントリーポイントです。

> SPYの日足が200 SMAをブレイク型で通過してから6週間が経過しました。

> 価格は2回、200 SMA付近まで調整し、その線で反発した履歴を作りました。

> 三回目の押し目で価格が200 SMA付近に到達し、

> そのローソク足が200 SMAの上で終値をつけたら、その足の終値で買いエントリーします。

> 損切りは直前の押し目安値の下に置きます。

> 終値ベースで200 SMAを明確に割り込んだら、このセットアップは失敗と見て手仕舞います。

一回目の押し目は、通過が本物だったかをまだ確認できない時点です。二回目の反発までは偶然と見る余地が残ります。三回目に同じ場所で同じ反応が再び出れば、市場参加者がその価格を分岐点として受け入れた証拠に近いと言えます。このセットアップは、資産が200日線の機能チェックを通過している場合にだけ意味を持ちます。

三回目の押し目で市場の合意を確認する
三回目の押し目で市場の合意を確認する2回守られた200 SMAが三回目も終値で守られたときだけ、その支持線を売買候補に上げます。

SMAがEMAより正確な場面 — 長期の終値分布

EMAは直近価格により大きな比重を置きます。通常はこの特性によって、EMAのほうが速く実用的な道具になります。ただし例外が一つあります。長期の終値分布を見る場面では、SMAの均等加重のほうがむしろ正確です。

200日線がまさにその場面です。200日線は「過去200営業日に市場が合意した平均取引価格」であり、この合意は200日前の取引も昨日の取引も同じ重みで作られた、という前提に立っています。200 EMAは昨日の価格により大きな重みを与えるため、直近のボラティリティに振られます。一方、200 SMAはその変動を吸収し、終値分布の中心値を示します。

長期トレンドの心理的な分岐点を示すには、SMAのほうがEMAより安定しています。NVDAの200 EMAと200 SMAを同時に表示すると、強気局面では200 EMAが200 SMAより5〜10%ほど上にあります。押し目が200 EMAで一度止まり、200 SMAでもう一度止まる二段階の押し目パターンがよく出るのはそのためです。浅い押し目はEMAで、深い押し目はSMAで止まります。

この違いを理解すると、二つのラインを併用する理由がはっきりします。200 EMAは現在のトレンドライン、200 SMAは歴史的な分岐線です。同じ200という数字を使っていても、異なる期間の記憶を見ている二つの道具です。

EMAとSMAは異なる時間の記憶を見る
EMAとSMAは異なる時間の記憶を見るEMAは現在のトレンドにより速く反応し、SMAは長期の終値分布の中心をより安定して示します。

200営業日という数字は絶対ではない

200営業日は、米国株式市場の1年に正確に対応した数字ではありません。週末・祝日を除くと、米国株の実際の営業日は年間約252日であり、200はそれより短い慣習的な長期線です。24時間取引される暗号資産には休場日がないため、200本はおよそ200日に相当し、米国株でいう約10カ月に近い区間を見ることになります。別の資産で同じ長さの区間を見たいなら、期間そのものを調整する必要があります。

BTCの日足で1年に相当するローソク足は約365本です。200をそのまま使うと、BTCでは約7カ月分のラインを見ていることになります。自分が扱う資産の取引カレンダーに合わせて1年を再計算しなければ、同じ200という数字が資産ごとに異なる期間を指してしまいます。

この調整を一度しておくと、資産間のシグナル比較が初めて意味を持ちます。SPYの約1年に近い長期線と、BTCの365日が、似た長さの区間を指すようになります。

同じ200本でも市場ごとに実際の期間が異なり、資産のカレンダーに合わせて期間を補正する必要がある

200日線が意味を失う四つの場面

  • 形が定まる前のエントリー: 通過直後の1〜2週間は、形がまだ決まっていないグレーゾーンです。往復型が終わるまでは、200日線をセットアップラインとして使いません。
  • デッドクロスによる売りの遅れ: デッドクロスが出る頃には、価格はすでに50日線と200日線の大きな距離を下落した後です。売りシグナルとして使うと、損失の大部分を抱えた後に手仕舞うことになります。弱気局面に入ったことは、価格構造(直前のスイング安値割れ)のほうが早く知らせてくれます。
  • Volume Profileが空白の区間: 200日線が通る価格帯に実際の出来高が積み上がっていてこそ、その線は心理的サポートとして機能します。出来高分布が空いている価格帯を200日線が通っているなら、その位置はチャート上の数字にすぎません。
  • セクター・マクロと連動していない場合: 個別銘柄が200日線の上にあっても、そのセクターETFやSPYが弱ければ押し目は深くなります。NVDAの200日線セットアップがきれいに機能した時期は、QQQも同時に強かった時期に集中しています。一つの銘柄の200日線だけを見て入ると、市場全体の弱さを見ないままポジションを取ることになります。