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Supertrend — ATRトレーリングストップの色転換

損切り幅を自動で決め、一貫したRRを作るためのツールです。

Supertrendが人気を集めた理由はシンプルです。価格のそばに色付きのラインが1本表示され、買い・売りを直感的に示してくれるからです。緑なら買い、赤なら売りと解釈し、色が変わった足をそのままエントリー・決済シグナルとして使います。レンジ相場で5〜10本ごとに色が変わるような局面でも、同じように毎回入ってしまう使い方がよく見られるのはそのためです。

Supertrendは、ATRトレーリングストップに近いツールです。単独の買い・売りシグナルとして使うものではありません。ラインは価格からATR × Multiplierだけ離れた動的な損切り位置であり、色はその損切りラインが価格の上にあるのか下にあるのかを示しています。こう捉えると、Supertrendの主な価値は損切りの自動化にあります。

損切りが自動で決まれば、一貫したRRを作れます。エントリーのたびに手作業で損切り位置を変えていると、同じシステムでも取引ごとにRRが変わり、期待値を計算できません。一方でSupertrendが損切り位置をATR単位で決めてくれれば、ボラティリティが変わっても損切り幅がそれに合わせて調整され、RRを一定に保ちやすくなります。同じR単位で結果を追跡できれば、システム評価はずっとシンプルになります。

ATRが損切り幅を自動調整します
ATRが損切り幅を自動調整しますボラティリティが高まると損切りラインは遠くなるため、数量を減らして同じR単位のリスクを維持します。

Multiplierが損切り距離を決める

Supertrend(10, 3)では、中央の数字がATR期間、最後の数字がMultiplierです。ここで押さえておきたいのは、バンドが足の中値(hl2、つまり高値と安値の平均)を基準に、hl2 ± Multiplier × ATRで描かれるという点です。エントリー価格が基準ではありません。したがってMultiplier 3は、中値から3 ATR離れた位置に損切りラインを置くという意味です。「エントリー価格から正確に3 ATR」という意味ではありません。実際のエントリー価格とラインの距離は、エントリー時点によって3 ATRより少し狭くも広くもなります。それでも、Multiplierが大きいほど損切り幅がATR単位で比例して広がる関係は変わりません。自分の売買スタイルに合う損切り距離をATR単位で決め、その数字をMultiplierに入れれば、システムの骨格ができます。

エントリー時点のSupertrendラインの位置がそのまま損切り位置であり、エントリー価格とラインの距離が損切り幅です。利確目標を2Rに設定するなら、ラインから同じ距離だけ上に測った位置が第1目標になります。ボラティリティが上がるとラインは遠くなり、損切り幅は広がりますが、そのときは数量を減らしてR自体を一定に保ちます(ATRの記事で説明したR per ATRと同じ考え方です)。

この一点を理解すれば、SupertrendはRRを自動で整えるシステムになります。チャートにラインを1本置くだけで、エントリー・損切り・目標がすべてATR単位で決まります。

エントリーからラインまでが損切り幅、その2倍が2R目標となりRRが自動で固定される

Olivier Sebanの原型 — ATR(10)、Multiplier 3の恣意性

Supertrendは、2000年代後半ごろにフランスのトレーダーOlivier Sebanが広めたツールとして知られています。広く使われている標準値はATR期間10、Multiplier 3で、この2つの数字がインターネット上の標準として定着しました。

問題は、この2つの値がどの資産にも検証済みの最適値ではないことです。当時の欧州株や指数の日足のような市場を念頭に置いた無難な出発点にすぎず、その時代のボラティリティと現在のBTC・SOLのボラティリティでは、そもそも大きさが違います。ATR(10)は期間が短く、Multiplier 3はボラティリティの高い資産では通常の押し目(Pullback)でも頻繁に損切りにかかります。自分の取引する資産で一度も検証しなければ、単にデフォルト値をそのまま使っているだけです。

資産ごとの合理的な出発点は、ボラティリティによって変わります。

  • SPY・QQQ日足(低ボラティリティ): ATR(10)にMultiplier 2程度を出発点にします。通常の押し目がATRの2倍以内に収まりやすく、損切りにかかりすぎません。
  • BTC・ETH日足(中〜高ボラティリティ): ATR(10)にMultiplier 3〜4の範囲が適しています。通常の押し目がATRの3倍まで進むことがあるため、Multiplier 2では狭すぎます。
  • SOL・DOGE・LINKのようなアルト(高ボラティリティ): ATR(10)にMultiplier 4〜5を使います。1日の値動きがATRの4倍を超える足がよく出るため、さらに遠くに置きます。

調整の基準は、トレンドの終盤までポジションを保てる取引の割合です。60〜70%なら適切です。通常の押し目は吸収し、本当にトレンドが終わるところで降りられているという意味です。30%以下ならMultiplierが小さすぎるサインで、90%以上なら逆に大きすぎるサインです。

LINKが2024年12月に18ドルから24ドルまで上昇する間、日足のSupertrend(10, 3)は通常の押し目1回で決済されました。同じ資産にMultiplier 5を適用すると、その押し目を吸収しながらトレンドの終盤まで保有できました。結局、自分の資産でバックテストして初めて、自分の道具になります。

Multiplierは資産ごとに調整します
Multiplierは資産ごとに調整します低ボラティリティ資産と高ボラティリティ資産では通常の押し目幅が異なるため、同じMultiplierをそのまま使うのは難しくなります。

複数Supertrendの方向一致 — 1本の色転換はノイズです

1本のラインの色転換をエントリー・決済シグナルにすると、レンジ相場でのウィップソー(Whipsaw)が大きく増えます。ATR(10)、Multiplier 3の標準設定でETHの1時間足を1週間だけ見ても、だましシグナルは毎日2〜3回出ます。

この落とし穴を避ける堅実な方法が、複数Supertrendの方向一致です。期間の異なる3本のSupertrendを同時に表示し、3本すべてが同じ色のときだけ、その方向のトレンドと見なします。

  • 短期ライン: ATR 7、Multiplier 2に設定します。短期のボラティリティと押し目の識別に使います。
  • 中期ライン: ATR 10、Multiplier 3にします。Sebanの原型に近い標準設定で、トレンド方向を示す基本ツールです。
  • 長期ライン: ATR 14、Multiplier 4にします。長期のボラティリティチャネルであり、大きな流れのトレンド方向を担います。

3本のラインがすべて緑なら、短期・中期・長期のボラティリティチャネルがすべて上向きにそろっている明確なサインです。3本のうち1本でも色が違えば方向が曖昧な場所であり、その区間ではエントリーを止めます。この1つのルールだけで、ウィップソーの80%は消えます。

方向一致と押し目エントリーを組み合わせる

> ETH日足でSupertrend(7,2)、(10,3)、(14,4)を同時に見ます。

> 3本のラインがすべて緑を5本以上維持している中で、

> 価格が短期Supertrend(7,2)ラインまで調整し、その後再び上に戻ります。

> 短期Supertrendの上で終値が確定した足の終値で買いエントリーします。

> 損切りは最も近い中期Supertrend(10,3)ラインの下に置きます。

> エントリー時点で損切り幅が自動的に決まります。

> 第1目標は損切り距離の2倍上(2R)に置きます。

> 短期ラインだけが赤に変わっても、すぐには決済しません。

> 中期ラインまで赤に変わったら、トレンドが弱まったと判断します。

核心は、短期ラインをエントリーと押し目、中期ラインを損切り、長期ラインを大きなトレンド方向として役割分担することです。1本のラインに3つの機能をすべて任せようとすると、毎回曖昧な場面にぶつかります。3本のラインを機能ごとに分ければ、それぞれのラインが最も得意な仕事だけを担えます。

ETHが2024年11月に3,500ドル付近から12月に4,000ドルまで上昇する間、3本のラインはすべて緑を維持しました。その中で短期ラインまで下げる押し目が2回あり、どちらもエントリーシグナルとして機能しました。同じ時期に単純なATR(10)、Multiplier 3の1本だけを見ていた人は、途中のだましの赤で決済し、後半の上昇を逃しました。

3本の方向一致がトレンドを作ります
3本の方向一致がトレンドを作ります短期・中期・長期のSupertrendが同じ色のときだけトレンドと見なし、それぞれのラインに役割を分けます。

ボラティリティ急変時の損切り距離の拡大

ATRが突然2倍に跳ね上がると、Supertrendラインは価格から異常に遠くなります。その時点で新規にエントリーすると、損切り距離は普段の2倍になります。

このときは損切り距離はそのままにし、数量を減らしてRを一定に保ちます。ATRが普段の2倍なら、数量を半分にします。そうすれば、R単位で結果を追跡する流れが崩れません。

逆にボラティリティが普段の半分に縮小すると、損切り距離が狭くなりすぎ、ノイズでも損切りにかかります。この場合はMultiplier自体を一時的に1段階上げるか、エントリーを見送ります。ボラティリティが極端に収縮した後に出る最初の大きな足がエントリー候補であり、その足の後にATRが正常に戻れば標準Multiplierに戻します。

ATR拡大で損切り幅が広がるため、リスクを一定に保つにはポジションを縮小する

RR自動化が崩れる3つの場面

  • 1本のラインの色転換をシグナルにすること: 1本のラインの色は短期ボラティリティの結果にすぎず、トレンドが変わった証拠にはなりません。3本の方向一致を併せて見なければ、レンジ相場で毎回ウィップソーに巻き込まれます。
  • 複数タイムフレームの衝突: 4時間足の方向がそろっていても、日足が赤ならトレンドに逆らうエントリーです。まず上位足の方向に従い、下位足ではエントリータイミングだけを細かく調整します。
  • Multiplierを下げて早いシグナルにしようとすること: Multiplierを2未満に下げると、損切り幅がATRの2倍以内に入り、通常の押し目でも毎回決済されます。早いシグナルが必要なら、タイムフレームを下げるほうが安全です。Multiplierを狭めると損切り幅だけが小さくなり、決済頻度が増えます。

3本の方向一致が有効なシグナルとして機能する2つの条件

複数Supertrendのセットアップを信頼して使うには、次の2つがそろっている必要があります。

  • エントリートリガー: EMAへの押し目、価格構造のブレイク、RSI 50の回復など、エントリータイミングを決める別のツールです。Supertrendはトレンド方向と損切りラインを担当し、エントリータイミングはトリガーが決めます。
  • HTFの方向一致: 4時間足の方向が日足と同じなら、最も堅い形です。HTFが食い違う場所では、サイズを落とすか見送ります。
1本の色転換はウィップソーが多くなります
1本の色転換はウィップソーが多くなりますレンジ相場では単一ラインの転換をシグナルとして受け取らず、複数ラインの方向がそろうまでエントリーを見送ります。