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T3 — 6重平滑移動平均
EMAの遅れを抑えた平滑曲線。トレンドの曲率を読むためのツールとして使います。
T3は、複数回の平滑化を行いながら遅れを抑えた移動平均です。EMAよりノイズが少なく、SMAほど遅れないため、平均線の傾きの変化を見る場面で役立ちます。
エントリーサインとして使うと、この長所は消えてしまいます。T3の傾きがきつくなっているのか、横ばいになっているのか、下向きに折れ始めているのかが重要な情報だからです。つまり、この曲率の変化そのものがモメンタム転換のシグナルになります。

問題は、EMAで使っていたやり方をそのままT3に持ち込むと、T3の強みが失われることです。価格がT3の上なら買う、2本のT3が交差したら入る、といった使い方では、EMAと同じ落とし穴を抱え込むことになります。レンジではダマシが積み上がり、トレンドが始まる局面では結局反応が遅れます。T3は本来、傾きがどれだけ速く変化しているかを読むためのツールなので、エントリーシグナルとして使うと効果が落ちます。
曲率がモメンタムです
トレンドの中でT3が上向きに傾いていること自体は珍しくありません。本当に重要なのは、その傾きがきつくなっているのか、横ばいになっているのか、折れ始めているのかです。同じ上昇トレンドでも、T3の傾きがきつくなっている区間はトレンドが強まっている局面であり、横ばいになっている区間はモメンタムが冷めていく局面です。
この情報をEMAで読むと、横ばいになったり傾きがきつくなったりを毎回繰り返しているように見えます。SMAで読むと、横ばいになったことに気づくのがかなり遅れます。一方、T3は平滑度が高いため、本物の曲率変化だけを残し、ノイズを吸収します。だからこそ、T3が横ばいになり始めたという事実は、EMAでは捉えにくい確度の高いシグナルとして機能します。
QQQが2024年7月に500ドル付近の高値をつける直前の2週間、日足T3(14, 0.7)の傾きはいったんきつくなった後、横ばいになりました。同じ時点でEMA(14)の傾きの変化は小さく、ノイズに埋もれていました。T3は曲率の変化を先に明確に示し、その後QQQは8月第1週に一気に460ドル付近まで下落しました。

6重平滑の逆説 — 速いが、より遅れる局面があります
T3がEMAより全体として速いという説明は、トレンドが進行している間に限った平均的な話です。変曲点では、むしろ逆の動きをします。
平滑化を6回繰り返すと、変化が大きく積み上がらなければラインは折れません。補正項が遅れを減らしてくれるとはいえ、6段階の平滑化をすべて通過してライン全体に反映されるには時間がかかります。価格が急に反対方向へ動き始めても、T3の傾きはゆっくり変わります。
この逆説を測定すると、はっきりした非対称性が見えます。T3はトレンド進行中の押し目をEMAよりうまく吸収しながら追随しますが、トレンド転換点ではEMAより明確に遅れて折れます。したがって、モメンタムの状態を見るにはT3が最も正確ですが、方向転換を捉えるには最も遅いツールになります。
この非対称性を理解しないままT3をエントリー・手仕舞いの道具として使うと、毎回遅れて入り、遅れて出ることになります。T3の居場所はその中間です。トレンドが生きている間、モメンタムがどう変化しているかを観察する位置に置くべきです。

トレンド段階は4つに分かれます
T3の傾きと曲率を合わせて見ると、トレンドは4段階に分けられます。
- 開始段階: T3の傾きが0付近から一方向へ明確に転じる区間です。ただし、T3でこの段階を察知するのは遅れるため、開始は別のツール(価格構造のブレイク)で捉え、T3は確認用に使います。
- 加速段階: T3の傾きがきつくなっていく区間です。トレンドが強まっている最中なので、押し目買いが最も機能しやすく、T3までの押しは堅い買い場になります。
- 成熟段階: T3の傾きが一定に保たれる区間です。トレンドは生きていますが、新規エントリーは保守的に見て、既存ポジションは維持するのが妥当です。
- 失速段階: T3の曲率が横ばいになり始める区間です。利確比率を上げ、新規エントリーは止め、現在のトレンドが間もなく終わる可能性を見ます。
> ETH日足が200 EMAの上にあり、ADXが23以上の上昇トレンドで、
> T3(14, 0.7)が加速段階にあり(傾きが直近10本の平均よりきつくなっている)、
> 価格がT3まで押した後、T3の上で終値をつけるローソク足が出ます。
> その足の終値で買いエントリーし、損切りはT3ラインの下0.5 ATRの位置に置きます。
> T3の曲率が横ばい段階へ移るか、価格が終値でT3を下抜けた場合は、見立てが外れたと判断します。
ETHが2024年11月に2,500ドル台から3,200ドル台へ上昇した区間では、T3の加速段階で拾った押し目買いはほぼすべて機能しました。同じセットアップは、失速段階へ移った12月初旬には2回連続で損切りに終わりました。

volume factor — 0と1の間の意味
T3の2つ目のパラメータであるv(またはvfactor、b)は、0から1の間の値です。直感的には、補正の強さを表します。
vを0にすると補正がなくなり、T3は6回平滑化したEMAになります。非常に滑らかですが、非常に遅く動きます。vを1にすると補正が最大になり、T3はほぼ遅れなく価格を追いますが、速いぶんオーバーシュートが発生します(価格が止まっても、T3が一瞬さらに上へ進んでから戻ります)。
Tillsonが0.7をデフォルト値にしたのは、実験してみた結果、平滑度と反応性のバランスが最も自然だったためです。実験から経験的に選ばれた値です。
調整基準はひとつです。ダマシなしに曲率の変化がよく見えるvを探すことです。vが低すぎると曲率変化の出現が遅すぎ、vが高すぎるとオーバーシュートによって曲率が毎回揺れ、段階を分けられません。資産・時間軸に合わせてバックテストし、本物のトレンド終了と偽の平坦化の比率を比較すれば、適正値を見つけられます。BTC日足では0.6〜0.7が一般に合いやすく、NVDAのような個別株では0.7〜0.8のほうが機能することが多くなります。

warm-upの落とし穴 — 6×Nは最低限にすぎません
T3は6回平滑化するため、値が安定するまでに時間がかかります。Nのおよそ6倍、つまりT3(14)なら約84本、T3(20)なら約120本は、あくまで最低限と見るべきです。6段階の平滑化をすべて通過し、ライン全体が落ち着くには、この最低値よりかなり余裕のあるデータが必要であり、6×N直後の値にはまだ初期の揺れが残っていることがあります。
この点は、主に2つの場面で無視されがちです。第一に、短いバックテスト期間(例: 100本)でT3(20)を使うと、データのほぼ全体がwarm-up区間になり、シグナル自体に意味がありません。第二に、新規上場資産の初期データでT3のトレンドを判断することも、同じ理由で適切ではありません。6×Nを最低基準としつつ、実際には資産の1年分(約365本)以上のデータから始め、T3ラインが十分に安定した足からシグナルとして扱うのが安全です。
T3シグナルが崩れる3つの場面
- 単純なクロスでのエントリー: 2本のT3ラインのゴールデンクロス・デッドクロスで入ると、EMAクロスと同じ落とし穴にはまります。レンジではホイップソー(Whipsaw)が積み上がり、トレンド相場でもクロスが出た時点では、すでにトレンドの一部が進んだ後です。
- 変曲点での手仕舞いに依存する: T3が折れるまで待つと、EMAよりも手仕舞いが遅れます。変曲点では、価格構造(直近スイング安値の下抜け)やRSI 50の終値割れのほうが、はるかに速いシグナルです。
- vをデフォルト値のまま使う: 0.7はあくまで平均的な値で、適正値は資産ごとに異なります。自分の資産で段階の区別がうまくできないなら、vを0.1刻みで調整してみるとよいでしょう。