OptiNod アカデミー
取引日誌をデータセットにする — 偏りは約定記録に残る
利確が早いという感覚だけでは証拠になりません。すべての約定に設定と予定した1Rを付ければ、設定別の期待値と実現率で偏りを測れます。
「利確が早い気がする」「損切りをよく破る」という自己評価は、数件の記憶です。すべての約定で同じ判断を列に記録すれば、偏りは設定別の期待値と実現率として計算できます。
取引日誌はすべての約定の記録です。データセットとして扱えば、一取引が一行、属性が列になります。エントリー時刻、決済時刻、設定名、入口の根拠、予定した損切り幅(1R)、実現損益(R)が列です。数百件がたまれば、知りたいことに応じて列を選び、集計で答えられます。
多くの日誌は反省文です。「今日は焦った。次は我慢しよう」という文章が増えていきます。読み返すと慰めになるかもしれませんが、集計できません。焦りが本当に損失を増やしたか、どの設定の期待値がマイナスかは文章から計算できません。反省文は標本一件の感想であり、感想だけで偏りは測れません。
「利益を早く確定しすぎる」という感覚は分布についての主張です。分布でしか確かめられません。設定の期待値は、勝率に平均利益Rを掛け、そこから負ける確率(1−勝率)と平均損失Rの積を引いて求めます。取引を設定別に分けて計算すれば、漠然とした印象は設定ごとの数値になります。マイナスの期待値を持つ設定が口座を減らします。
判断は最近の数件に左右されます
人はすべての取引を同じ重みでは覚えません。最近の取引や大勝・大敗は実際以上に強く残り、多数の普通の結果はぼやけます。そのため「最近うまくいかない」「この設定は合っている」という印象は、目立った数件を全体に広げたものになりがちです。実際の分布とは異なることが少なくありません。
日誌をデータセットにすれば、すべての約定は同じ一行です。大勝も普通の結果もそれぞれ一行。集計は全行を使うので、直近の記憶に要約が引っ張られにくくなります。勝率60%なのに口座が減る場合のように、感覚と期待値がずれる点も、全行を集計すれば数字で確認できます。

列がなければ偏りは計算できません
偏りを測るには、生の取引一覧へ列を加えます。取引所のダウンロードには通常、入口価格、出口価格、損益程度しかありません。それだけでは処分効果も追いかけエントリーも計算できません。偏りごとに必要な列があり、エントリーか決済の時点で自分で記録する必要があります。

- 設定タグ: 突破、押し目、逆張りなど、入口ルールを一つのラベルで記録します。設定別集計の基準列です。
- 予定1R: エントリー時に決めた損切り幅をリスクの単位として記録します。以後の損益はこれで割ってRで表します。
- 実現R: 決済損益を予定1Rで割った値です。勝敗と大きさを一つの数値にします。
- 保有時間: 入口と出口の時刻の差です。勝者と敗者の平均を比べれば、処分効果を時間で測れます。
- エントリーのスリッページ: シグナル足の終値と実際の入口価格の距離をRで記録します。追いかけた大きさが分かります。
- 損切り遵守: 予定どおり損切りしたか、延ばしたかを「はい・いいえ」で記録します。違反率はアンカリングとナンピンの指標です。
- 直前の結果と感情タグ: 前の取引の勝敗と入口時の状態(焦り、過信、恐怖など)を分類します。文章では書きません。
これらの列はエントリーと決済の瞬間にこそ正確に記録できます。数日後に記憶で埋めれば、数字そのものに偏りが入ります。
列を組み合わせると偏りごとの指標になります
列が揃えば、偏りは異なる集計で計算できます。それぞれに固有の列の組み合わせがあります。
実現Rの符号と未決済ポジション数から、処分効果のPGR/PLRを求められます。利益を実現する割合が損失を実現する割合より高ければ、出口は非対称です。保有時間を勝ち負けで分ければ、同じ非対称性を時間でも確かめられます。
エントリースリッページ列の平均は、シグナルと執行の差をRで表したものです。大きいほどシグナルより遅く入り、目標までの距離が短くなり、損益比が下がります。
損切り遵守列の違反率は、予定より損失を大きくした頻度です。違反取引の平均実現Rを遵守取引と比べれば、損切りを延ばす習慣が平均損失をどれだけ増やしたか計算できます。
直前の結果の列からは、損失直後の再エントリー期待値が出ます。負けた取引からN本以内に入った取引だけを選び、全体の期待値と比べます。低ければ、リベンジ取引が少しずつ口座を減らしている可能性があります。
各指標は前の記事で定義しました。ここで重要なのは、すべて同じデータから出ることです。処分効果のPGR/PLRも、追いかけによるスリッページも、損失直後の期待値も、一つの取引一覧の列を別の方法でまとめた結果です。必要な列を一度揃えれば、一つのデータセットで複数の偏りを測れます。
設定別の期待値が止めるべき取引を示します
最も直接的な集計は設定別期待値です。設定タグで行をまとめ、各グループの勝率、平均利益R、平均損失Rを求めます。例えば突破設定50件の勝率が45%、平均利益2.0R、平均損失1.0Rなら、期待値は45%×2.0R−55%×1.0R=+0.35Rです。同じ口座の逆張り設定30件で勝率55%、平均利益0.8R、平均損失1.3Rなら、55%×0.8R−45%×1.3R=−0.145Rです。
全体の期待値だけでは二つが混ざり、プラスに見えるかもしれません。分けると逆張り設定が口座を減らす原因だと分かります。廃止候補は勝率の低い設定ではなく、期待値がマイナスの設定です。上の逆張りは勝率が10ポイント高くても、期待値はマイナスです。
ただし少数の取引によるマイナス値だけで廃止してはいけません。8件の−0.2Rは偶然かもしれません。十分な取引がある設定だけを判断し、少ない場合はタグを付け続け、推定値が安定するまで保留します。

タグ付けと廃止は繰り返す作業です
日誌のデータ化は一度の整理では終わりません。毎週新しい行を加え、設定別期待値と偏りの指標を再計算します。マイナスの設定を廃止するか入口条件を狭め、出口指標が非対称なら損切りと目標を調整します。その後の標本で変更が期待値に効いたか、また集計します。
手計算もできますが、取引一覧をCSVで出してCSV分析にアップロードすれば、勝率、損益比、期待値、ドローダウンをまとめて計算できます。設定列があれば同じ指標を設定別に見られます。道具の仕事は集計で、タグ付けは人が取引時に行う必要があります。空欄から偏りを計算できる道具はありません。
目的は勝率を上げることではありません。期待値がマイナスの設定を減らし、プラスの設定の比率を増やして、全体の期待値を少しずつ上げることです。一週間の標本は小さく値が揺れますが、同じ手順を繰り返せば、どの設定が口座を減らすかが数週間を通じて安定した数字になります。
二つの落とし穴
感情の列を反省文にすること。 「焦った、反省している」という文章では集計できません。焦り、過信、恐怖など少数のカテゴリーにしてタグを付ければ、実現Rと組み合わせ「過信した取引の期待値」のような数値を出せます。文章は読み返すため、タグは集計するためのものです。
標本の少ない設定を早く廃止すること。 数件の損失だけでやめれば、最近性バイアスをルールにしただけです。プラスの期待値を持つ設定にも短い連敗は自然に起こります。標本数と期待値の信頼区間を合わせて見てから廃止を決めます。
タグ付きの列があって初めて偏りは数値になります
日誌を反省文として使えば偏りは曖昧な感覚のままで、次の損失でまた揺れます。データセットにすれば「利確が早い」は勝者と敗者の平均保有時間の差に、「この設定は合う」は設定別期待値になります。処分効果、追いかけ、リベンジ取引は前の記事で別々に扱いましたが、結局は同じデータセットの列を違う形で集計したものです。すべての約定に設定と予定1Rを記録してこそ、その印象を計算可能な列に変え、複数の偏りを一緒に測れます。