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VIDYA — 適応型モメンタム加重平均

ボラティリティに自動適応する移動平均。レンジ相場のダマシをEMAより抑えます。

VIDYAは、現在の市場環境に応じて反応速度が変わる移動平均です。トレンドが強いときは価格に素早く追随し、レンジ相場では平均線がほぼ止まることで、不要なクロスを減らします。

EMAはレンジでもトレンドでも同じ速度で価格を追いかけるため、横ばい相場では小さな揺れのたびにクロスが発生します。一方、VIDYAはモメンタムが弱まると平滑化係数を下げ、平均線を寝かせます。その結果、シグナルそのものの発生回数が減ります。

見るべき基準は平均線の傾きです。VIDYAが水平ならエントリー判断を止め、価格がレンジをブレイクしながらVIDYAが傾き始める足だけを、トレンド転換候補として見ます。

レンジではEMAは揺れ、VIDYAは止まります
レンジではEMAは揺れ、VIDYAは止まりますモメンタムが低いとVIDYAはほぼ水平になり、ダマシのクロスを減らします。

CMO — トレンドの強さを測る効率比

VIDYAは、ボラティリティの大きさに加えて、その値動きが一方向にどれだけ持続しているかを見て適応します。Chandeが同時に設計したCMO(Chande Momentum Oscillator)の絶対値が、αを調整するゲートとして機能します。

CMOは、N本のあいだの上昇分の合計と下落分の合計の差を、その合計値で割った比率です。簡単に言えば効率比です。同じボラティリティでも、一方向に安定して動いたのか(トレンド)、上下に行き来したのか(レンジ)を区別します。注意すべき点はスケールです。標準インジケーターとしてのCMOは−100〜+100の範囲で表示されますが、VIDYAがαを調整するときに使うのは、この値を100で割って−1〜1に正規化した絶対値です。この記事でCMOの絶対値を0〜1の範囲で表記する場合は、すべてこの正規化基準(標準インジケーター値を100で割った値)を指します。正規化したCMOの絶対値が1に近ければ(標準インジケーター値では100に近ければ)、一方向の強いトレンドです。0に近ければ、上下がほぼ同じ比率で振れるレンジ相場です。

この測定方法が、VIDYAを他の適応型平均(AMA・KAMA)と異なるものにしています。VIDYAは、ボラティリティがどれだけ一方向に持続しているかに適応するため、単にボラティリティの大きさに反応するツールとは異なる結果を出します。レンジ内の大きな値動きには平均線が鈍く反応しますが、トレンド進行中の大きな値動きには素早く反応します。つまり、同じ価格変化でも、今の市場状態によって意味が変わるという点が、そのまま平均線の動きに反映されます。

ETHが2024年7月の1か月間、2,900〜3,200ドルのレンジにとどまっていた時期、正規化CMOの絶対値はほとんど0.3以下(標準インジケーター値では30以下)でした。同じ期間にEMA(14)はダマシのゴールデンクロス・デッドクロスを5回作りましたが、VIDYA(14)はほぼ水平のままで、明確なシグナルを一度も出しませんでした。レンジで動かずにいてくれること自体が、VIDYAの価値です。

CMOゲートは現在の市場環境に応じて開閉します
CMOゲートは現在の市場環境に応じて開閉します一方向の動きが優勢になると、平均線は価格により速く追随します。

平均線の傾き自体がエントリーゲートになる

EMAを使う場合、エントリーシグナルを受け取る前に、ADXが20以上か、価格が直前のスイング内にあるかといった条件を別途確認する必要があります。VIDYAでは、平均線そのものがその役割を担います。水平ならエントリーシグナルをすべてオフにし、明確に傾いたら、その方向のエントリー候補を検討します。

こうすると判断回数が減ります。VIDYAが水平な間はシステム自体を止めておきます。レンジ内であらゆる買い・売りセットアップを確認すると、ダマシのエントリーを5〜10回繰り返しがちです。トレンドフォロー型システムの損失が統計的に最も大きくなりやすいのはレンジ相場です。このゲート条件ひとつで、システムの期待値は大きく変わります。

VIDYAが水平なら進入を止め、傾けばその方向に進入を開きます

動き出すポイント — 水平から傾きへ

VIDYAで最も信頼度の高いエントリーポイントは、平均線が水平から傾き始める足です。レンジが終わってトレンドが始まるとき、正規化CMOの絶対値が0.3以下から0.5以上へ(標準インジケーター値では30以下から50以上へ)上昇し、αが大きくなります。

> ETHの日足が2,500〜2,700ドルのレンジで1か月横ばいになったあと、

> VIDYA(14)が水平から右肩上がりに傾き始めます(直近5本の平均傾きに対して1σ以上)。

> 同時に、価格がレンジ上限(2,700ドル)を終値ベースでブレイクします。

> その足の終値で買いエントリーします。損切りはレンジ中央(2,600ドル)の下に置きます。

> VIDYAが再び水平に戻るか、価格がレンジ下限(2,500ドル)を終値で下抜けた場合は、想定が外れたと見なします。

重要なのは、VIDYAが傾き始めることと価格のレンジブレイクが、同じ足で同時に起きることです。2つのシグナルが同時に出れば、ブレイクがダマシになる確率は明確に下がります。反対に、価格だけがレンジを抜け、VIDYAがまだ水平なら、本物のトレンド転換ではない可能性が高いです。

同じセットアップを反転させれば、レンジ下限割れのショートエントリーにもそのまま使えます。

ブレイクとVIDYAの傾きは同じ足に重なる必要があります
ブレイクとVIDYAの傾きは同じ足に重なる必要があります価格のブレイクだけでVIDYAが水平なら、ダマシの可能性があります。

レンジ相場とトレンド相場の両方に適応しやすい平均

VIDYAの動きを一言でまとめると、レンジではSMAのように、トレンドではEMAのように動きます。CMOが低いとαが小さくなり、平均線はゆっくり動いてSMAに近い平滑性を持ちます。CMOが高いとαはEMA水準まで上がり、価格に素早く追随します。

この自動切り替えは、トレンド中の押し目(Pullback)でひとつの特徴を生みます。強いトレンド局面では、VIDYAがEMAよりも価格に近く張り付くためです。αが大きくなることで、小さな押し目にも素早く追随します。そのため、小さな値幅でも押し目買いのポイントを捉えられる利点がありますが、そのぶん損切り幅が狭くなるという欠点も伴います。

この問題の解決策はシンプルです。トレンド中の押し目エントリーでは、損切りをVIDYAの下0.5〜1 ATRに置きます。平均線のすぐ下に損切りを置くと通常のボラティリティでも毎回損切りにかかりますが、ATR分の距離を取れば、通常の変動は吸収し、本当にトレンドが崩れたときだけ撤退できます。

CMO期間という第2の自由度

標準的なVIDYAのパラメーターはひとつ(period)として知られていますが、実際の実装の多くは、VIDYA自体の期間とCMOの期間という2つを受け取ります。通常はどちらも14や9に揃えますが、別々に設定すると、より細かく調整できます。

CMO期間を短く設定すると(例:5)、平均線は短期的なボラティリティ変化にも素早く反応します。レンジ相場でも、小さなトレンドの試みに対して平均線が起き上がりやすくなります。逆に長く設定すると(例:21)、大きな流れの転換にだけ反応するため、レンジ内の短期的な変動を無視します。

資産の特性に合わせて2つの期間を分ければ、効率比のどの時間軸の変化に平均線を反応させるかを決められます。BTCの日足なら通常はVIDYA(14, CMO=14)で十分ですが、アルトコインの長く深いレンジでは、(14, CMO=21)のほうがダマシで動き出すシグナルをよりよく除外できます。

2種類のVIDYA — 実装の確認

Chandeの1992年の原型は、標準偏差比率を適応ゲートとして使っていました。その後、1995年の*The New Technical Trader*でCMOベースに再定義されています。そのため、VIDYAという同じ名前の下に2つのアルゴリズムが存在します。

TradingViewのコミュニティ版は多くがCMOベースですが、一部の古いライブラリは標準偏差比率版を使っています。そのため、同じデータに同じパラメーターを使っても、2つのプラットフォームで異なる結果になることがあります。自分のツールがどちらの定義を使っているかを一度確認しておかないと、バックテスト結果を再現しにくくなります。

VIDYAのシグナルが弱くなる場面

  • トレンド開始直後の反応が遅い: VIDYAはレンジ相場でαが小さいまま維持されるため、レンジを抜ける最初の足ではEMAより一拍遅れて反応します。これはレンジでのダマシを減らす代わりに払うコストです。レンジブレイク足の終値でエントリーするルールにすれば、この遅れを自然に吸収できます。
  • 出来高確認のないエントリー: VIDYAが水平から傾きへ転じるタイミングで、出来高が直前平均より明確に増えていれば、本物のトレンド開始である可能性が高くなります。出来高が普段どおりなら、ダマシの転換かもしれません。
  • HTFとの不一致: 1時間足のVIDYAが傾き始めている一方で、日足のVIDYAがまだ水平なら、短期的な変動で終わる可能性が高いです。HTFのVIDYAの傾きも同時についてくるときに、信頼度は明確に上がります。
VIDYAはレンジ相場とトレンド相場で異なる動きをします
VIDYAはレンジ相場とトレンド相場で異なる動きをします横ばいでは寝たままになり、ブレイクが始まると傾き、強いトレンドでは価格に張り付きます。