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ボラティリティ・ブレイクアウト — 収縮を手掛かりにする戦略

価格の方向ではなく、ボラティリティの収縮と拡大をシグナルとして使う戦略です。まずスクイーズを確認し、拡大が始まった方向に追随します。

> シグナルはボラティリティの収縮と拡大から生まれます。まず値動きが狭く煮詰まった局面を探し、拡大が始まった方向に追随します。

ボラティリティ・ブレイクアウト戦略は、ボラティリティが極端に収縮した局面を先に見つけ、その後に続く拡大に賭ける戦略です。いま市場の値動きが狭く煮詰まっているという一点を根拠に、価格がどちらへ行くかを当てようとせず、近いうちに大きく動くことへ賭けます。日足や4時間足のようにノイズがある程度ならされる時間軸で、しばらく狭いレンジが続いたあと一気に大きく動く資産に向いています。

一般的な解釈では、エントリーシグナルを価格の方向に求めます。レジスタンスを上に抜ければ買い、サポートを下に割れば売り、という考え方です。この方法では、価格がすでに動いたあとで初めてシグナルが出るため、拡大の初動を逃し、かなり遅れた位置で入ることになります。ボラティリティ・ブレイクアウトの着目点は違います。エントリーを決める情報は、ボラティリティがどれだけ収縮し、そこから再び広がり始めるかです。

この違いを受け入れると、チャートを見る順番が変わります。方向を先に決め打ちしてエントリー位置を探す売買から、ボラティリティが十分に収縮しているかを先に確認し、その後に拡大方向へ追随する売買へ変わります。本稿では、なぜボラティリティの収縮がシグナルになるのか、その収縮をどの指標で測るのか、そして拡大方向に乗るためのエントリーと損切りをどう設計するのかを扱います。

ボラティリティの収縮の後に拡大が続くという戦略の基本原理

低ボラティリティは低ボラティリティを呼び、高ボラティリティは高ボラティリティを呼ぶ

ボラティリティ・ブレイクアウト戦略が成り立つ土台は、ボラティリティ・クラスタリング(Volatility Clustering)です。市場のボラティリティはまとまって現れます。静かな日の後には静かな日が続き、大きく揺れた日の後には再び大きく揺れる日が続きやすくなります。価格の方向を予測するのはほぼ不可能ですが、ボラティリティがどの程度になるかは直前のボラティリティに強く依存します。

このクラスタリングが、戦略の中核となる前提を作ります。ボラティリティが極端に低い局面がしばらく続いたなら、その低ボラティリティは永遠には続かず、いずれ高ボラティリティへ転換します。収縮は拡大の前触れであり、値動きが狭く煮詰まっている時間が長いほど、その後の拡大幅も大きくなる傾向があります。エントリーの根拠は、現在の低ボラティリティが近く高ボラティリティへ変わるという統計的性質です。

2024年のBTC日足は、このクラスタリングをそのまま示しています。9月末から10月中旬にかけて、日足の高値・安値の値幅が目に見えて狭くなりました。9月28日は1.3%、9月29日は1.0%、10月5日は1.1%、10月19日は1.0%というように、1%前後の狭い日が繰り返しまとまって現れました。同じ期間、ATR(14)は10月11日の約2,679ドルから10月28日の約1,903ドルまで一貫して低下しました。低ボラティリティが低ボラティリティを呼ぶ局面が、ほぼ1か月続いたのです。そして11月5日の米大統領選をきっかけに、ボラティリティは一気に噴き出しました。11月6日の1日の高値・安値の値幅は7,102ドル(約10.2%)、11月11日は9,315ドル(約11.6%)となり、同じ2週間でATR(14)は約1,903ドルから約4,142ドルへ、2倍以上に拡大しました。価格は6万8千ドル台から9万ドル付近まで上昇しました。狭く煮詰まった1か月が、大きな拡大を予告していたと言えます。

バンド幅の収縮がスクイーズの最も直接的なシグナルになる

ボラティリティがどれだけ収縮したかを測る最も直接的な指標は、ボリンジャーバンドのバンド幅(Bandwidth)です。バンド幅は、上側バンドと下側バンドの距離を中央の移動平均で割った値で、標準偏差が小さくなるほど、つまり価格変動が小さくなるほど低下します。バンド幅が一定期間の最低水準まで下がった状態を、スクイーズ(Squeeze)と呼びます。

バンド幅を絶対値で見ると、資産ごと、時期ごとに基準が変わるため実用的ではありません。そのため、バンド幅のパーセンタイルで見ます。直近120本のバンド幅分布の中で、現在のバンド幅が下位10%以下なら、過去半年の中でも特に静かな局面に入っているという意味です。ここが拡大を待つ場所です。バンド幅パーセンタイルで現在のボラティリティ水準を見れば、単に価格が横ばいに見えるという印象に頼らず、数値でスクイーズを確認できます。

先ほどのBTCの例では、10月中旬の狭い局面はバンド幅が明確に底値圏へ向かって低下した時期でした。1日の値幅が1%前後まで縮小し、ATRが1か月を通じて低下していく間、バンドは価格に沿って中央へきつく狭まりました。バンド幅が底値圏に到達したこと自体が、拡大が迫っているという警告であり、11月初旬の爆発的な拡大がその警告を裏づけました。バンド幅が底を打ち、再び広がり始める最初の足が、拡大の出発点になります。

ボリンジャーがケルトナーの内側に入ればスクイーズは確定する

バンド幅だけでは、収縮が十分かどうかの判断がぶれます。そこでボラティリティ・ブレイクアウトのトレーダーがよく使う、より堅い基準が、ボリンジャーバンドとケルトナーチャネル(Keltner Channel)を重ねて見る方法です。ケルトナーチャネルは、ATRを幅の基準にするバンドです。標準偏差で作られたボリンジャーバンドが、ATRで作られたケルトナーチャネルの内側へ完全に入ると、ボラティリティが通常より異常に収縮しているシグナルになります。この条件を最初に体系化したのが、John CarterのTTM Squeeze系指標です。

2つのバンドを重ねて使う理由は、測定方法が異なるためです。ボリンジャーバンドの幅は標準偏差に反応し、ケルトナーチャネルの幅はATRに反応します。価格が狭く横ばいになって標準偏差が低下すると、ボリンジャーバンドが先に素早く狭まります。一方、ATRで作られたケルトナーチャネルはそれよりゆっくり縮小します。そのため、ボリンジャーがケルトナーの内側に収まる瞬間は、標準偏差で見たボラティリティが、ATRで見たボラティリティよりもさらに収縮していることを意味し、単なる横ばいを超えた本格的なスクイーズと判断できます。

さらにドンチャンチャネル(Donchian Channel)の圧縮も併せて見ると、視野が広がります。ドンチャンチャネルは一定期間の最高値と最安値を結ぶシンプルな価格チャネルで、このチャネルの幅が狭まるということは、直近N本の間に新高値も新安値も作れず、ひとつのレンジに閉じ込められているという意味です。ボリンジャーがケルトナーの内側に入り、ドンチャンチャネルの幅まで狭いなら、標準偏差、ATR、実際の価格レンジの3つがすべて収縮を示している場所です。3つの指標が同時に狭まっている局面ほど、その後の拡大の信頼度は高くなります。

ボリンジャーバンドがケルトナーチャネルの内側に入りスクイーズが確定する

方向は分からない。だから拡大が始まってから追随する

スクイーズが確認できたとしても、どちらの方向へ噴き出すかまで分かるわけではありません。ボラティリティ・クラスタリングが予告するのはボラティリティの大きさで、方向は開いたままです。そのため、方向を先に決め打ちする売買は、結果を予測できない確率ゲームに近くなります。スクイーズの中で上に行くと決めつけて先に買えば、半分のケースでは反対方向の拡大でそのまま損失を被ります。

方向を扱う方法は2つあります。第一に、拡大が始まった方向を見てから追随するトレンドフォローです。価格がスクイーズ区間の上限を終値ベースで突破すればその方向に買い、下限を割り込めば売ります。シグナルが遅れる代わりに、方向がすでに決まった後で入るため、偽の方向に賭けるリスクを抑えられます。第二に、両方向で待機する方法です。スクイーズ区間の上下にそれぞれエントリー注文を置き、先に到達した側で入り、反対側の注文はキャンセルします。どちらの方向であっても、拡大が始まる瞬間に自動的に乗る方法です。

2024年11月のBTCは、拡大方向に追随する方法が機能した例です。10月中旬まで6万8千ドルを中心に狭く横ばいだった価格は、11月6日に終値ベースで直前レンジの上限を力強く突破しました。その足の高値・安値の値幅は7,102ドルで、平常時の3倍を超えていました。ブレイク方向を見て買ったトレーダーは、その後9万ドル付近まで続いた拡大にそのまま乗ることができました。反対に、2024年8月5日には拡大が下方向に噴き出しました。7月末まで狭まっていた1日の値幅が、8月5日の1日で9,306ドル(約16%)へ爆発的に広がり、価格は急落しました。方向を事前に決めず、拡大が始まった側に追随する原則は、どちらのケースでも正しい側に立たせてくれます。

方向を決め打ちせず、スクイーズの上下に両方向のエントリー注文を置く

損切りは反対側のバンドかATR倍率で置き、偽の拡大に耐えられる幅を持たせる

ボラティリティ・ブレイクアウトで最も多い損失は、実際の拡大の初動を捉えていながら、損切りが狭すぎて振り落とされるケースです。スクイーズ直後の拡大は一方向にきれいに進むとは限らず、ブレイク直後に1本から2本の反動を伴うことがよくあります。エントリー価格のすぐ下に損切りを置くと、この通常の反動で決済され、本来その後に来る本格的な拡大を逃してしまいます。

損切りはボラティリティの大きさに合わせて広めに置く必要があります。最もシンプルな基準は、エントリー足のATR倍率です。エントリー終値からATRの1.5倍から2倍下に損切りを置けば、拡大局面における大きな足1本から2本分の反動に耐えられます。もうひとつの基準は反対側のバンドです。上抜けで買ったなら、損切りはボリンジャーバンドの下側バンド、またはケルトナーチャネルの下限に置きます。拡大が有効なら、価格が反対側のバンドまで戻る理由はないため、反対側バンドの割り込みは拡大失敗を示す自然な基準になります。

損切り幅を広げる代わりに、エントリーサイズを小さくしてリスク総量を合わせます。スクイーズ直後のATRは拡大とともに急激に大きくなるため、同じ金額を賭けると、ATR基準の損切り幅が広がった分だけ損失リスクも大きくなります。損切りまでの距離が2倍に広がったなら、エントリー数量を半分に減らし、1回の損失額を一定に保ちます。広い損切りと小さなサイズを組み合わせることが、偽の反動に耐えながらリスクを管理する方法です。

スクイーズ・ブレイクアウトの買いセットアップ

拡大方向に追随する最も基本的なセットアップです。スクイーズ確認、エントリートリガー、損切り、無効化がすべて測定可能なラインで定義されていて初めて、実戦で使えます。

  • [ ] スクイーズ確認: 日足ベースでボリンジャーバンド(20, 2)がケルトナーチャネル(20, 1.5×ATR)の内側へ完全に入った状態が、少なくとも6本以上続いている。同時に、バンド幅が直近120本の下位10%パーセンタイルを下回っている。
  • [ ] エントリートリガー: 価格が直前20本の高値(ドンチャンチャネル上限)を終値ベースで上抜ける。
  • [ ] 出来高: ブレイク足の出来高が直前20本の平均の1.5倍以上である。
  • [ ] エントリー: そのブレイク足の終値で買う。
  • [ ] 損切り: エントリー終値からATR(14)の2倍下、またはケルトナーチャネル下限のうち、より近い方に置く。
  • [ ] サイズ: 損切りまでの距離が通常の2倍なら、エントリー数量を半分に減らし、1回の損失額を口座の1%以内に収める。
  • [ ] 無効化: ブレイク後3本以内に終値が再びスクイーズ区間(直前20本高値の下)へ戻った場合、偽の拡大と見て決済する。

重要なのは、スクイーズ確認がエントリートリガーより先に来なければならないという点です。バンドがケルトナーの内側に入り、バンド幅が底値圏にあるという条件が満たされていない状態で、ブレイクだけを見て入るなら、それは単なる一般的なトレンドフォローです。スクイーズが深く長かった場所ほど、その後の拡大幅と信頼度はともに高まります。

下方向の拡大を狙うショートセットアップは、この条件をそのまま反転して適用します。同じスクイーズ条件のもとで、価格が直前20本の安値を終値ベースで下抜け、出来高が増えたなら、その足の終値で売り、損切りはケルトナーチャネル上限、またはエントリー終値からATRの2倍上に置きます。

スクイーズ・ブレイクアウトのエントリー・損切り・無効化ラインの全体像

スクイーズ・ブレイクアウトが偽で再び収縮するなら即座に手仕舞う

すべてのスクイーズ・ブレイクアウトが拡大につながるわけではありません。偽の拡大の典型的な形は、ブレイク足が出た直後に出来高が増えず、1本から2本のうちに価格が再びスクイーズ区間の内側へ戻り、バンド幅がまた狭まるケースです。ボラティリティが一瞬だけ漏れ出したものの、すぐに収縮へ戻る場所です。

この無効化を判断する基準は、終値とバンド幅です。ブレイク後、価格が終値ベースで再びブレイクラインの内側へ戻ったなら、そのブレイクは偽だったと見ます。さらにバンド幅が再び狭まり、ボリンジャーがケルトナーの内側へ再び入るなら、拡大は起きておらず、市場がスクイーズへ戻ったというシグナルです。このときは損切り価格に到達するのを待つ理由がありません。拡大という前提そのものが間違っていたと見て、即座に手仕舞う方が損失を抑えられます。

ボラティリティ・ブレイクアウトの使い方を誤るケースは、ほとんど次の3つに集約されます。第一に、スクイーズを確認せず、単なるレンジブレイクに入ることです。バンドが十分に収縮していない状態のブレイクには拡大の土台がないため、再びレンジ内へ戻りやすくなります。第二に、方向を先に決め打ちすることです。スクイーズの中で上に行くと信じて先に買えば、反対方向の拡大にそのままさらされます。第三に、損切りを狭く置きすぎることです。拡大初動の通常の反動で振り落とされた直後に本格的な拡大が出る経験が続くと、戦略そのものが合っていないと誤解しやすくなります。まずボラティリティの大きさを測り、方向は拡大が始まってから追随し、損切りはボラティリティに合わせて広く置き、サイズでリスクを管理すること。この3つが、この戦略を継続可能にする柱です。