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Volume Profile — Auction TheoryとOpen Typeマトリクス(第3回)
Volume Profileは単独の売買シグナルではありません。Auction Market TheoryにおけるInitiative/Responsiveの分類と、昨日のValue Area・今日のOpenの4つの関係が、実際のセットアップを成立させます。
> Volume Profileは価値の地図であり、Auction Market Theoryはその地図上で価格が動く2つのパターンを説明するものです。
前2回では、単一セッションのVolume Profileを精密に読む方法(POC・Value Area・HVN/LVN)と、Composite Profileで複数の時間軸を統合する方法を扱いました。道具は十分にそろいました。とはいえ、道具だけでエントリーは決まりません。Steidlmayerが*Market Profile*で整理した命題、つまり「市場は適正価格を探すオークションである」という考え方が、その空白を埋めます。オークションで価格が動くパターンは2つしかありません。新しい価格帯を作ろうとするInitiative activity(昨日のValue Areaの外側で引けようとする動き)と、現在の価格帯を守ろうとするResponsive activity(Value Areaの端から再び内側へ戻る動き)です。
一般的な解釈は、「チャートにVPを表示し、価格がPOCやValue Areaに触れたら売買する」で終わりがちです。しかし、同じPOCへのタッチでも、トレンド再開の足場になることもあれば、短期反発の上限になることもあります。その分岐を生む背景、つまり昨日の取引分布と今日の寄り付きの関係が、まるごと抜け落ちているのです。
ここで見るべきポイントは2層あります。まず、昨日のValue Areaと今日のOpenの4つの関係、Higher Value、Lower Value、Overlapping Value、Outside Valueが、その日のシナリオを一行で定義します。その上で、SteidlmayerのOpen Type 4分類(Open-Drive、Open-Test-Drive、Open-Rejection-Reverse、Open-Auction)が、最初の30分から1時間の値動きを分類し、そのシナリオをどこまで信頼できるかを決めます。この2つを重ねて初めて、VPは売買判断の材料になります。

InitiativeとResponsiveの違いは時間にあります
Initiative activityは、新しい価格帯を作る動きです。昨日のValue Areaの外側で取引が積み上がり、そこに時間をかけて滞在しながら、新たに出来高が集まる領域を作ります。一方、Responsive activityは、現在の価格帯を守る動きです。価格がValue Areaの端に触れると、参加者はその水準を高すぎる、または安すぎると判断して反対注文を出し、価格はValue Areaの内側へ素早く戻ります。そのため外側には取引時間がほとんど積み上がりません。したがってVolume Profileでは、Single Printが出やすい場所はResponsiveの痕跡として残り、出来高が厚く新たに積み上がる場所はInitiativeの痕跡として残ります。
ES 12月限の2024年11月18日セッションでは、前日にValue Area 6,005〜6,032で取引された後、午前9時35分(米東部時間)に価格が6,045まで上昇し、30分で6,028へ戻りました。外側の領域(6,032〜6,045)にはSingle Printだけが並び、取引時間はほとんど積み上がりませんでした。典型的なResponsive sellingです。一方、11月22日には価格がVAH(6,055)を終値ベースで上抜けた後、6,060〜6,075のレンジで2時間にわたり取引が積み上がり、新しいValue Areaの下限を作りました。同じVAHへのタッチでも、状況によって正反対の意味を持つ例です。
昨日のValue Areaと今日のOpenの4つの関係
Higher Valueは、寄り付きが昨日のVAHより上で始まるケースです。ギャップアップや夜間上昇の痕跡であり、このときInitiative buyingが続けば新しいValue Areaが上方に形成されます。反対にResponsive sellingが入れば、価格は昨日のValue Area内へ戻り、ギャップを埋める動きになります。Lower Valueは、寄り付きが昨日のVALより下で始まるケースで、Higher Valueを上下に反転した形です。Initiative sellingなのかResponsive buyingなのかによって、同じ構造で分岐します。
Overlapping Valueは、寄り付きが昨日のValue Area内で始まるケースです。昨日取引された価格帯がなお有効であることを寄り付きがそのまま示す、最も中立的な出発点です。この場合はOpen Typeが決定的な手がかりになります。Outside Valueは、寄り付きが昨日のValue Areaから1 ATR以上離れ、かつ前日レンジの外で始まるケースです。大きな夜間イベント(決算、経済指標のサプライズ、地政学的イベント)の痕跡であるため、売買せず観察する場面に分類します。

NVDAは2024年11月21日の決算後、時間外で+6%上昇し、翌日の通常取引の寄り付きは昨日のValue Area Highから1.8 ATR上で始まりました。Outside Valueの状況で、普段のセットアップ(VAH回帰買い、POCタッチ買い)をそのまま使ったトレーダーは、ギャップを半分ほど埋める過程で2回損切りになりました。このような場面では、新しい価格帯が定着するまで様子見するほうが賢明です。

Open Type 4分類 — 最初の30分を読む枠組み
Open-Driveは、寄り付きから一方向へ迷わず走る形です。最初の2〜3本(5分足基準)で同じ方向の陽線または陰線が続き、寄り付きがその日の高値または安値になります。夜間に決まった方向が通常取引の開始と同時にそのまま実行される、最も強いInitiativeシグナルです。Open-Test-Driveは、寄り付きからいったん逆方向を短く試してから、本来の方向へ進む形です。たとえばギャップアップで始まった後、最初の15分で寄り付きの下へ少し押し、その後強く上へ向かうケースです。ギャップダウンで寄り付きの上を一度試してから下へ向かう売り方向も同じ構造で、方向を反転すれば上下どちらにも同じように適用できます。この短い試しの動き自体が、反対側に受ける流動性がないことを確認する段階になります。
Open-Rejection-Reverseは、寄り付きから一方向へ動き出したものの、その方向が明確に拒否され、反対方向へ進む形です。ギャップアップで始まったのに、最初の30分以内に寄り付きより下で引け、その後昨日のValue Areaへ戻っていく、Responsive selling/buyingの最もきれいな形です。Open-Auctionは、寄り付きの±0.5 ATR以内で最初の1時間上下する形です。市場がどの価格を適正と見るかまだ決められていない状態なので、通常のセットアップは信頼しにくくなります。
ES 3月限の2025年1月10日セッションは、非農業部門雇用者数の発表後、Lower Valueで寄り付きました。最初の5分で寄り付きの上へ短く上昇した後、2本目の5分足で寄り付きの下で引け、その後1時間で-1.5%下落しました。Lower ValueとOpen-Test-Drive sellingが重なり、その日の引けまでトレンドが続いた例です。


境界エントリーと回帰エントリーでは重みが違います
同じVAH・VALの水準でも、エントリー方法は2つあります。境界エントリーは、価格がVAH・VALに触れた瞬間、市場が次にどう動くかを予測して入る方法です。予測が当たれば価格が内側へ戻り、大きな値幅を取れます。外れればInitiativeが進行し、価格はそのまま抜けてすぐ損切りになります。回帰エントリーは、価格がVAH・VALを一時的に抜けた後、再び内側へ戻る足、つまりResponsive sellingが目で確認できた場所で入る方法です。市場がすでに動きを示した後に入るため、ダマシにかかる確率は下がりますが、エントリー価格が内側になるためリスクリワード(R:R)は低くなります。
QQQは2024年12月6日のイントラデイセッションで、昨日のVAH(530.20)に2回触れました。1回目のタッチ(午前10時15分)では530.45まで上がった後、30分以内に528.80へ戻りました。境界エントリーで530.40付近からショートしていれば、内側へ戻った分だけ大きなリスクリワードが出たはずです。一方、回帰エントリーのトレーダーは、価格が内側へ戻ったことを確認してから(530.05で引けた5分足)入るため、エントリー価格はすでに内側にあり、目標までの値幅が狭くなった分、リスクリワードは低くなりました。その代わり、最初のタッチがダマシだった場合、回帰エントリーではそもそもシグナルが出ないため損切りを避けられます。ところが2回目のタッチ(午後1時30分)では、530.20から530.40、530.80、531.20へと上昇しました。Initiative buyingが働き、境界エントリーでショートしたトレーダーは即座に損切りです。同じ水準に2回触れながら、1つのセッション内で正反対の結果が出た例であり、回帰エントリーはリスクリワードを下げる代わりに、2回目のようなダマシをふるい落とせることも示しています。
実戦セットアップ — マトリクスを通過した場所だけがセットアップになる
> Lower Valueの状態で、昨日のPOC(SPY 580.50)が今日の寄り付き(578.20)より上に位置しています。
> 最初の30分がOpen-Drive sellingとなり、-0.8%下落しながら昨日のVAL(577.00)も終値ベースで下抜けます。
> 価格が577.00の下で安定した後、昨日のPOC(580.50)までプルバックする場面をショートの再エントリー候補にします。
> プルバック到達時、5分足が580.50で拒否を示す足(直前足の安値割れ)を作れば、その終値でショートします。
> 損切りは昨日のPOCの上0.3 ATR(581.10)です。POCを超えて終値を付けたら、Initiative sellingという判断が誤りだったと見なします。
> 利確1つ目は今日のセッション安値、2つ目は昨日のVALから昨日のValue Area Widthの1.0倍下に置きます。
> Higher Valueの状態で、ES 3月限の寄り付き(6,082)が昨日のVAH(6,062)より上で始まります。
> 最初の30分でOpen-Rejection-Reverse sellingが現れ、価格は6,070まで回帰します。
> 価格が昨日のVAH(6,062)を終値ベースで下抜けた5分足の終値でショートします。
> 損切りは昨日のVAHの上0.4 ATR、つまり戻りの流れが無効になる位置に置きます。
> 利確1つ目は昨日のPOC(6,048)、2つ目は昨日のVAL(6,032)です。
Outside Value(決算直後、FOMC直後)とOpen-Auctionの状況では、通常のセットアップはすべてオフにします。新しい価格帯がまだ定着していない状態では、既存のValue Areaはシグナルとしての有効性を失い、境界エントリーも信頼しにくくなります。観察しながら次のセッションを待つほうがよい場面です。
マトリクスを無視したときに起きる3つの落とし穴
- VPを表示しておけば売買ポイントが自然に見えると思い込むこと: VPは、昨日や先週に取引がどこへ集中したかを示す測定ツールにすぎません。今日の寄り付きがその分布のどこから始まったのか、最初の30分がどのOpen Typeなのかが決まらなければ、同じPOCでも正反対の意味を持ちます。
- 境界エントリーのリスクリワードだけを見て状況を無視すること: VAH境界でのショートはリスクリワードが大きく見えますが、Higher ValueとOpen-Drive buyingが重なった状況では、ほぼ100%損切りにつながります。リスクリワードが5Rのセットアップでも、勝率が10%なら期待値はマイナスです。
- Open Typeを5分足1本で決めつけること: Open Typeは、最初の30分から1時間の動きを見て判断する必要があります。ところが最初の足1本だけでOpen-Driveと決めつけると、毎回Open-Test-Driveの反対方向へのテストに巻き込まれ、損切りが積み上がります。5分足を少なくとも3〜6本は見てから分類を確定してこそ、信頼できる判断になります。
シリーズを締める一行
Volume Profileは、取引がどこに集中したかを精密に測る測定ツールであり、エントリーシグナルはその測定の上で組み立てます。エントリーは、その測定結果の上で、今日の市場が新しい価格帯を作ろうとしているのか、既存の価格帯を守ろうとしているのかを、Open Typeと4関係マトリクスで判断してから決めるものです。Part 1の単一セッションの道具、Part 2の時間軸の合成、Part 3のAuction Market Theory。この3層が重なって初めて、VPは売買判断の一部として機能します。
