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Wyckoff Method — スキーマティックにおける9つのイベントの視覚ロードマップ(第6回)
ワイコフ・スキーマティックの核心は、9つのイベント(PS・SC・AR・ST・Spring・Test・LPS・SOS・BU)が現れる時間順序と出来高のシグネチャにあります。チャートの形が模式図と違っても、イベント順序が合っていれば機能します。
> ワイコフ・スキーマティックの本質は、*9つのイベントの時間順序と出来高のシグネチャ*にあります。図の形そのものは、その次の問題です。
前の5回では、3 LawsとComposite Operator、Accumulationの5フェーズ、Distributionの5フェーズとUTAD、VSA・Weis Waves、そして暗号資産・アルゴリズム市場におけるワイコフの適用まで整理しました。第6回では、それらすべてのツールを1枚の模式図の上にどう配置するかを扱います。ワイコフ本人が単一の模式図を提示したわけではありません。教科書で見るスキーマティックは、ワイコフの死後に講座を引き継いだ講師陣(Robert Evansなど)が1940〜50年代に学生教育用として整理した図であり、現在標準として使われている形はHank PrudenとWyckoff Institute(現SMI)系統が洗練させたバージョンです。
Evansは2種類の買い集めスキーマティック(Schematic #1、#2)と2種類の売り抜けスキーマティックを整理し、それぞれのスキーマティック上に9つのイベントラベル(PS・SC・AR・ST・Spring・Test・LPS・SOS・BU、またはUT・UTAD・LPSY)を時間順に配置しました。この図が強力だった理由は、学生がチャート上でどの出来事をどの順番で探すべきかを、視覚的に覚えられたからです。
一般的な解釈は、この視覚的な強みを逆に読み違えます。「教科書のスキーマティックとまったく同じ形がチャートに出るのを待つ」、あるいは「チャートの形がスキーマティックと違うからワイコフは機能しない」。この2つの結論は、どちらも同じ誤りから生まれます。本当の価値は、9つのイベントがどの順番で現れるか、そして各イベントがどんな出来高のシグネチャを伴うかにあります。チャートの見た目が模式図と違っても、イベント順序と出来高が合っていれば、スキーマティックは正確に機能します。

9つのイベントには決まった順序があります
買い集めスキーマティックの9つのイベントには決まった時間順序があり、その順序が崩れれば、同じラベルが付いていても別の出来事として見る必要があります。順序はPS → SC → AR → ST → Spring → Test → LPS → SOS → BU(または2回目のLPS)です。
前半の4イベント(PS・SC・AR・ST)は、直前の下落トレンドが止まった痕跡であり、Phase Aにあたります。この4つが順番どおりにそろって初めて、レンジの上限と下限に意味が生まれます。
- PS: PSが先に出ないままSCだけが単独で出た場合、そのローソク足が本物のクライマックスである確率は低く、トレンド途中の大きな陰線である可能性が高くなります。
- AR: ARがSC直後の自律反発として出なければ、売りはまだ枯れていません。
- ST: STがSC安値を割り込むなら、Phase Aはまだ閉じていないと見ます。
中盤の2イベントであるSpringとTestは、Phase Cの核心です。Springがレンジ下限を一時的に割り込んで戻り、その後のTestがSpring安値を割らず、出来高が細った状態で出る必要があります。2つの順序が逆になり、Testに見える足が先に出て、その後にSpringのような足が出るなら、それは別のシグネチャです。Spring以前のレンジ下限テストは、単なるレンジ内の振動にすぎません。その場でSpringを期待して入ると、追加下落を受ける可能性があります。
後半の3イベント(LPS・SOS・BU)は、Phase DとEの境界にあります。
- LPS: レンジ上限付近での最後のサポートテストです。
- SOS: その直後に出来高を伴ってレンジ上限を終値で上抜ける動きです。
- BU: SOS後、役割転換したレンジ上限をサポートとしてもう一度試す場面です。
SOSなしにBUだけが出た場合、そのレンジは本当の買い集めがまだ終わっていない可能性があり、BU足で入るとホイップソー(Whipsaw)に巻き込まれやすくなります。
BTCの日足は、2022年11月に15,500ドル付近で正確な9イベントのシーケンスを作りました。2022年6月18日に17,600ドルでPSが出来高増加とともに現れ、11月9日に15,500ドルまでさらに下落し、SCが直前平均出来高の3.4倍に達する巨大陰線として出ました。ARは11月中旬に17,300ドルまで自律反発し、12月末には15,800ドル付近でSTがSC比で出来高半分以下に細った状態で確認されました。2023年1月初旬の急速な上昇はSpringを別途作らないSpring-less accumulationのパターンでしたが、SOSは1月14日に出来高2倍超の陽線で17,400ドルを突破し、LPSは1月末に17,000ドル付近で形成されました。
Schematic #1 vs Schematic #2 — Springの有無
この講座系統で整理された2つの買い集めスキーマティックは、1点で分かれます。
- Schematic #1: Springを含みます。
- Schematic #2: SpringなしでSOSへ直接進みます。
レンジ内で売り物がどれだけ早く消化されたかによって現れる、2つの結果です。
Schematic #1(Springあり)は、レンジの間に損切り注文がレンジ下限のすぐ下へ厚く積み上がっている状態で作られます。価格がレンジ下限を一時的に下抜けし、そこに溜まった損切りを吸収する動きがSpringです。
そのためSchematic #1がうまく当てはまるのは、レンジ形成直前の下落幅が大きく、レンジ下限近くに一般参加者の損切り注文が目立って溜まっている資産です。BTCとETHの弱気相場の底値圏での買い集めは、概ねSchematic #1として進みます。
Schematic #2(Springなしの買い集め)は、Phase Bの時間が十分に長く、レンジ下限付近の損切り注文がレンジ内で少しずつ消化された場面で作られます。レンジ内で小さな下方テスト(minor springまたはshake-out)が何度も出て、損切りを分散して受け止めるため、Phase Cで別途Spring足を必要としません。

AAPLの2023年1月〜3月の130〜150ドルレンジは、このパターンの標準的な事例です。11週間にわたりレンジ内で小さな下方テストが3〜4回積み重なった後、5月のSOSへ直接進みました。
2つのスキーマティックを分ける実戦上の基準は、レンジ下限にどれだけ出来高が積み上がっているかです。Volume Profileでレンジ内部を見ると、レンジ下限付近に買い集めの出来高が厚く積み上がっている資産はSchematic #1へ進む可能性が高く、出来高がレンジ中央に集中している資産はSchematic #2へ進む可能性が高くなります。
レンジを見つけた時点で、Springを待つべきレンジと、SpringなしでSOSへ直行するレンジを事前に分けておけば、どこまで待つべきかが明確になります。
ここで重要なのは、どちらのスキーマティックも、9イベントのうちいくつかが欠けたパターンではないという点です。Schematic #2でもSpringの位置にはminor shake-outが入り、Testの位置にはその直後のレンジ下限再テストが入ります。形として目立たないだけで、イベントの情報はそのままレンジ内に蓄積されています。

出来高のシグネチャは形より正確です
スキーマティックの9つのイベントは、それぞれ固有の出来高のシグネチャを伴います。ローソク足の形は市場のボラティリティによって毎回変わりますが、出来高のシグネチャはメカニズムから直接生まれるため、市場環境が変わっても比較的一貫しています。だからこそ、形を追うよりシグネチャを追う方が正確です。
Phase Aの4イベントは、次の出来高のシグネチャを伴います。この4つが順番どおりに出れば、Phase Aが本当に閉じたと見ます。
- PS: 出来高が直前トレンドの平均より少し増える程度です。
- SC: 出来高が直前平均の2〜5倍まで大きく増えます。
- AR: 売りが一時的に枯れた状態での自律反発なので、出来高はSCの半分以下に落ちます。
- ST: 同じ価格帯を2回目に試しますが、出来高はSC比で30〜50%程度まで減ります。
Springの出来高パターンは2つに分かれます。
- high-volume Spring: 吸収が荒く進む形で、直前平均の2〜3倍の出来高を伴います。
- low-volume Spring: 売り物がすでに細っている状態で出る形で、直前平均以下の乏しい出来高で現れます。
どちらの場合でも、Test足の出来高がSpring足より明確に少ないことが核心です。同じ場所を2回目に試しているのに売りがほとんど追随しないという事実が、買い集め完了の直接的なサインになります。
SOSとLPSの出来高のシグネチャは正反対です。
- SOS: レンジ上限を平均出来高の1.5〜3倍以上で終値で上抜ける必要があります。
- LPS: その後、レンジ上限付近へ押し目(Pullback)が戻ってきた時、出来高が明確に細った状態で支えられる必要があります。
SOSの出来高が1.5倍に届かない、またはLPSの出来高がレンジ平均と同程度なら、そのブレイクはダマシである可能性が高くなります。
SPYが2020年3月23日に218ドル付近でSCを作った後、4月初旬までに示した出来高のシグネチャは教科書的です。3月23日のSC足の出来高は直前20本平均の4.2倍で、その後3月26日までのAR区間では平均出来高の1.5倍程度まで減りました。4月1日の218ドル付近のSTはSC比で出来高38%程度にとどまり、4月6日のレンジ上限の上抜け(SOS)は平均の2.1倍の出来高で確認されました。ローソク足の形は市場のボラティリティにより日々荒く振れましたが、シグネチャの順序は9イベントのマッピングと正確に一致していました。
> NVDAの日足で、直前の大きな下落後に6週間以上横ばいとなったレンジを確認します。
> レンジ序盤でPS・SC・AR・STが時間順に現れ、
> SC足の出来高が直前20本平均の3倍以上、
> ARとST足の出来高がSC比でそれぞれ50%、30%以下に細っています。
> レンジ内でOBVが明確な右肩上がりを維持しています。
> Spring足がレンジ下限を1〜3%下抜けした後、同じ足の中でレンジ内へ復帰し、
> 次のTest足の出来高がSpring比で50%以下に細っています。
> レンジ上限を平均出来高の2倍以上で終値で上抜けるSOSが現れます。
> LPS足がレンジ上限付近へ戻り、その上で引ける場面で買いエントリーします。
> 損切りはレンジ上限ラインの下、ATR 1倍の距離に設定します。
> 価格がレンジ上限を再び終値で割り込んだら手仕舞います。
スキーマティックを日足・週足へ拡張する
Evansがもともと整理したスキーマティックは、株式市場の日足または週足の時間軸を前提にしています。1940〜50年代のNYSEでは、買い集め1サイクルの期間が通常8〜16週間で、その中で9つのイベントが目で見て判別できる間隔で展開されたからです。ただし同じ9イベントは、時間スケールを変えてもメカニズム自体はそのまま機能します。
週足スキーマティックは最もきれいに機能します。1週間に5営業日分の情報が1本の足に含まれるため、レンジ内のノイズが減り、9つのイベントも視覚的に明確に分かれます。BTC週足が2022年6月から2023年1月まで約30週間にわたって作った買い集めレンジでは、週足1本1本が9イベントのいずれかときれいに対応しました。したがって買い集めの場面を最初に探すときは、週足スキーマティックから見る順序が効率的です。
日足スキーマティックは週足の約5倍の時間解像度を持ちますが、その分ノイズも5倍に増えます。1本の週足が5本の日足に分かれることで、ST区間の中に小さな陽線と陰線が入り混じって見分けにくくなり、Springに相当する日足が2〜3本に散らばることもあります。そのため日足では「1イベント=1本の足」という対応が崩れ、1つのイベントが2〜5本のまとまりとして出ることがあります。この場合、そのまとまり全体を1つのイベントとして見なければ、シーケンスが途切れてしまいます。
4時間足以下の短期スキーマティックは、アルゴリズム取引の干渉が本格的に入る領域であり、第5回で扱った圧縮シグネチャが頻繁に出ます。9イベントのうちSCとSpringが1本の足の中に圧縮されたflash crash型で出たり、ARとSTが同じ時間帯で振動して分けにくくなったりするケースがよくあります。短期スキーマティックは、週足・日足でレンジを先に見つけた後、エントリータイミングを整える補助ツールとしてだけ使う方が安全です。
ETH週足は、2022年6月から2023年3月まで約40週間にわたり形成した買い集めレンジで、9イベントがすべて出ました。2022年6月18日の880ドル付近のSC、7月中旬の1,250ドルAR、11月9日の1,070ドルST(出来高はSC比35%)、12月末〜2023年1月初旬のSpringなしのlong Causeパターン、1月14日の1,500ドルSOS(平均出来高の2.4倍)、1月末の1,550ドルLPS、2月初旬のBU形成まで、順序がきれいに積み上がりました。同じレンジを4時間足に分解すると同じシーケンスは見えますが、Phase B内のノイズにより、どの足がSTの終わりなのかは日足より曖昧になりました。
事例 — BTC 2023年買い集めスキーマティック・マッピング
BTC日足が2022年11月から2023年3月までに作った買い集めレンジは、9イベントのマッピングがほぼすべての足で明確に対応した珍しい事例です。レンジ上限は17,300ドル、下限は15,500ドル、レンジ幅は約11.6%、全体の期間は約16週間でした。9イベントのシーケンスを時間順にマッピングすると、次のようになります。
このレンジに先立つ長期PSは、2022年6月18日に17,600ドル付近ですでに出ていました。11月の買い集めレンジの直接的な始まりは、FTX破産ニュース直前の11月8日、18,500ドル付近での最後の買いの試みでした。その次の足から本格的なパニック売りが入りました。SCは11月9日に15,500ドル付近で出て、その日の出来高は直前20本平均の3.4倍、ローソク足の終値は安値から1,200ドル上まで回復して引けました。ARは11月14日までに17,200ドルへ反発し、その日の出来高はSC比48%程度まで細っていました。STは11月21日に15,500ドル付近で確認され、SC足の安値の少し上で止まり、出来高はSC比32%程度にすぎませんでした。
Phase Bは12月初旬から1月初旬まで約6週間、16,000〜17,000ドルの間で振動しました。この区間の足は見た目には通常のレンジ内変動でしたが、OBVラインは明確な右肩上がりを維持し、レンジ下限付近の出来高バーがレンジ中央より小さく引ける、出来高が枯れるパターンが積み重なりました。Schematic #2パターンの事前シグナルが、レンジ内で少しずつ蓄積された時期です。
Phase Cでは、明確なSpringは出ませんでした。その代わり、12月30日に16,400ドル付近でminor shake-outに近い短い下方テストが出て、その直後のTestに相当するレンジ下限再テストでは、出来高が直前足の半分以下に細った状態で引けました。Schematic #2に近いパターンが出たわけです。
SOSは2023年1月14日に出ました。17,200ドルのレンジ上限を平均出来高の2.7倍に達する陽線で終値で上抜け、足の長さもレンジ内の平均足より明確に大きくなりました。LPSは1月25日に17,000ドル付近で形成され、レンジ上限の上で出来高が細った状態の陽線で引けました。BUは2月初旬、17,500ドル付近で役割転換したレンジ上限サポートをもう一度確認する場面でした。このBU足の終値でエントリーした結果、BTCはその年の7月まで31,800ドルへトレンドを伸ばしました。
この事例の核心は、模式図と形が一致していなかったという点です。教科書的な買い集め模式図ではSpringがレンジ右端に描かれていますが、BTCの2023年1月のレンジには明確なSpringがありませんでした。それでも9イベントシーケンスの順序と出来高のシグネチャは正確に一致しており、だからこそスキーマティックは機能しました。

スキーマティック利用における3つの落とし穴
- 落とし穴1、チャートの見た目が模式図と同じになるのを待つ: 最もよくある、そして最もコストの大きい誤りです。Evansが描いた図は学生教育用に単純化したものであり、実際のチャートは毎回異なるボラティリティと異なる時間幅で現れます。模式図の見た目を基準にエントリー場所を待つと、同じ資産で本物の買い集め局面を「形が模式図と違う」という理由で取り逃がし、逆に形だけが似ている場面の多くはノイズになります。9イベントの順序と出来高のシグネチャを点検する方向へ、手順を組み直す必要があります。
- 落とし穴2、Springがなければ買い集めではないと判断する: Schematic #2(Springなしの買い集め)の存在を知らないトレーダーがよく陥ります。Springがないという理由だけでレンジを買い集め候補から外すと、AAPLの2023年1〜3月レンジやBTCの2022〜2023年レンジのような精度の高い買い集め場面を丸ごと逃します。Springがないと確認したなら、次のステップはSchematic #2パターンの検証です。Volume Profileの分布と、レンジ内のminor shake-outの頻度を見ます。
- 落とし穴3、短期スキーマティック(4時間足以下)を一次識別ツールとして使う: アルゴリズム取引の干渉が本格的に入る短期時間軸では、9イベントが圧縮されたり分散したりして、シーケンス識別そのものが不安定になります。スキーマティックを最初に探すときは週足、検証と精緻化は日足、エントリータイミングの微調整は4時間足、という順序が最も安定します。短期時間軸を先に見ると、ノイズに引っ張られてレンジ自体を誤って捉えやすくなります。
スキーマティック・マッピングの精度を高める2つの方法
- Phase Mapを自分で描く: 候補となるレンジを見つけたら、そのレンジ上に9イベントの時間順序を自分で書き込みます。PS・SC・AR・STがレンジ左側にすべて出ているか、Phase BでOBVが右肩上がりか、Springまたはminor shake-outがレンジ右側に見えるか、SOS・LPSがレンジ上限で出来高のシグネチャを伴って出たかを、紙の上に1行ずつ書き出します。
- 3段階の時間整合性を確認する: 週足スキーマティックでレンジを見つけ、日足で9イベントの出来高のシグネチャを検証し、4時間足でLPSとBUのエントリータイミングを整える順序です。3つの時間軸が同じシーケンスで一致しない場合、そのレンジはどれか1つの時間軸にだけ見える一時的なパターンである可能性が高く、エントリーの信頼度は明確に下がります。
Phase Mapの9項目のうち7つ以上が順番どおりに出ていれば、そのレンジは本物の買い集め候補です。5つ以下なら、別のレンジへ移る方が効率的です。ちょうど6つ出ている境界ケースでは、どの項目が欠けているかを見極める必要があります。SC・Spring・SOSのような中心イベントが欠けた6項目なら候補から外し、PSやBUのような補助的イベントだけが欠けた6項目なら、上位時間軸をもう一段確認したうえで候補として残します。
次の記事で扱うWyckoff Scannerの自動識別ロジックも、この3段階の時間整合性を中核的なゲートとして使います。
