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最近性バイアス — 正常な連敗をシステム故障と見誤る

検証済みのプラス期待値のシステムにも長い連敗は起こります。予想される連敗の長さとシステム変更の頻度を比べてから、故障と判断します。

検証済みで期待値がプラスのシステムも、正常に長い連敗を作ります。直近の5回、6回だけを覚えていると、普通のばらつきを故障と見誤ります。


最近性バイアスは、最近経験した結果に本来以上の重みを付ける傾向です。Amos TverskyとDaniel Kahnemanが1973年に整理した利用可能性ヒューリスティックに関係します。出来事の確率を判断するとき、実際の頻度を数える代わりに、例がどれほど簡単に思い浮かぶかで決めてしまいます。直近の5連敗は鮮明でも、半年前の20勝はぼやけています。最近の標本が判断を支配します。


取引では二方向に働きます。数回続けて負ければ「システムは壊れた」と止めます。反対に、最近よく当たったパラメーターを見ると「今はこの設定だ」と切り替えます。どちらも数件の結果を現在のシステム状態とみなしますが、標本は小さすぎます。


プラスの期待値を持つシステムでも、長い連敗は普通に起こります。勝率pのシステムをN回使うとき、予想される最長連敗はおおむねlogを底1/qとして(N·p)で表せます。qは損失確率(1−p)です。勝率45%で200取引なら約8回。8連敗だけで故障とは言えません。十分な標本には現れ得る正常な区間です。直近の5〜6回だけが記憶に残ると、このばらつきを異常と判断します。


長期の曲線と直近の下落を比較
長期の曲線と直近の下落を比較

思い出しやすさが最近の結果を過大評価させます


最近性バイアスは記憶の呼び出しやすさの問題です。確率には過去の全結果が必要ですが、人は容易に思い浮かぶ例で代用します。直近の損失は感情とともに鮮明で、古い利益は詳細が薄れます。最後の5件が基準になり、過去100件が判断から抜け落ちます。


少数標本の錯覚も重なります。5件や10件では勝率を推定できないのに、人は少ない標本でも安定した比率を期待します。TverskyとKahnemanは1971年にこれを「小数の法則」と呼びました。小さな標本が全体の性質をそのまま映すと思う誤りです。勝率55%のシステムでも5件中4連敗は十分起こります。それを現在の勝率とみなせば、55%のシステムを20%だと錯覚します。


直近の標本に重みを付けすぎると、通常のばらつきが異常に見えます。


プラス期待値のシステムも普通に連敗します


連敗が正常範囲かどうかは計算で確かめます。勝率p、損失確率q=1−pの独立した取引をN回行うと、予想最長連敗はおおむね底1/qの対数(N·p)です。


勝率45%のトレンド追随システムを200回使うと、予想最長連敗は約8回です。勝率50%の100取引なら約6回。勝率40%の150取引なら8〜9連敗も予想の範囲に入ります。勝つより負けることが多いシステムほど、普通に経験する連敗は長くなります。


頻度も推定できます。勝率45%で100取引すると、5連敗の区間は平均で2回以上現れます。勝率50%でも平均1〜2回あります。5連敗は珍しい事故ではなく、標本が増えれば普通に現れる区間です。


結論は明らかです。勝率と取引回数が分かれば、通常起こり得る最長連敗を前もって見積もれます。その範囲内の連敗はシステムの故障を証明しません。


正常な連敗で止めると大きなトレンドの直前に電源を切ります


この判断ミスの市場でのコストは大きくなります。2024年6月から10月までの約5か月、ビットコインはおおむね49,000〜74,000ドルの広い範囲を行き来しました。8月5日に49,000ドル付近まで下がってから60,000ドル台に戻るなど、方向が決まらない横ばいが続きました。


トレンド追随やブレイクアウトのシステムはこの局面で小さな損失を繰り返します。突破に入ると戻され、再び入っても戻されます。数か月続くと、最近性バイアスから「もう通用しない」と思いやすくなります。


10月に止めた人は次を逃しました。ビットコインは11月初めの約69,000ドルから上昇し、12月17日に108,353ドル、約57%高となりました。横ばいでの小さな損失は、こうした一度のトレンドを待つためのコストです。最近性バイアスはその直前にシステムを止めさせます。


トレンド追随の期待値は少数の大きな動きに依存することがあります。レンジの小さな損失はそれを待つ費用です。連敗中に止めれば、費用だけ払い、肝心のトレンドを逃します。


システムを止めた直後のトレンド
システムを止めた直後のトレンド

二つの数字で最近性バイアスを見つけます


感情の問題だけとして扱うと診断が曖昧です。二つの数値で実際に働いているか確かめます。


第一に、予想最長連敗と実際の連敗を比べます。勝率と予定取引数を先の式に入れれば通常範囲の長さが出ます。その範囲内なら普通のばらつき、大きく超えればシステムを再検討します。勝率45%・200取引のシステムで6連敗は約8回の予想内なので、それだけで停止する根拠は弱いものです。


第二に、システム変更の頻度を数えます。取引記録に停止やパラメーター変更の時点と、直前の連敗数を記します。変更が正常範囲内の短い連敗直後に集中するなら、早く見捨てている定量的証拠です。変更後の成績と、以前のシステムを続けた場合の仮想成績を並べれば、変更が得だったか数字で見えます。


  • 予想連敗を計算: 取引開始前に勝率と予想取引数から予想最長連敗を計算し、記録します。
  • 変更時の連敗を記録: 停止やパラメーター変更のたびに、直前の連敗数を記します。
  • 変更前後を比較: 変更後の成績と、元のシステムを続けた場合の成績を並べます。
  • 正常範囲の基準: 予想連敗数を廃止判断の参考とし、その範囲内の連敗だけならシステムを維持します。

正常な連敗と警告のしきい値
正常な連敗と警告のしきい値

正常なばらつきを先に知れば連敗中も判断を保てます


連敗で判断が揺れるのは、正常なばらつきの幅を知らないからです。先に見積もれば、その幅に収まる限り、変える理由は弱くなります。OptiNodの検証ツールは取引前に幅を見積もる助けになります。


ウォークフォワード分析は最適化期間と検証期間を分けて進み、各検証期間の成績を示します。分布から、そのシステムにとって普通の不調がどの程度か分かります。頑健性の三指標や四半期ごとの測定も、一つのシステムの成績を複数期間に分けます。一四半期が悪くてもほかが補えば、その不調は通常のばらつきかもしれません。


取引結果の順番だけを無作為に入れ替えてドローダウン分布を作るモンテカルロ再標本化も同じ目的です。同じ取引を何千回も並べ直せば、起こり得る最長連敗と最大ドローダウンの分布が得られます。現在のドローダウンがそのどこに位置するかで、正常範囲か警告かを考えられます。


幅を数字で書いておけば、直近の5連敗だけでは計画を覆せません。


二つの落とし穴


最近好調だったパラメーターへ切り替えること。 最近性バイアスの反対側は、今うまくいった設定を追うことです。先月最も利益を出したものへ切り替えると、その期間に合わせた過適合になりがちです。直近の収益に合わせた変更は曲線合わせに近く、次の期間では不調になり得ます。


連敗中だけに新ルールを導入すること。 「このフィルターがあれば損失を防げた」と条件を足す場合、その根拠は直近の数件だけかもしれません。過去の損失を消しても、全期間の期待値を下げることがあります。新しいフィルターは全期間のバックテストと独立データで確かめます。


連敗の正常範囲は計算で決まります


最近性バイアスはシステムが健全なときにも強く働きます。検証済みで期待値がプラスでも長い連敗は普通に起こり、直近だけを見ると故障に見えます。対策は気持ちを強く持つことではありません。取引前に勝率と取引数から予想最長連敗を求め、再検討が必要な基準にします。今の連敗が範囲内なら、直近5件だけでは停止の理由になりません。記憶では正常な変動と故障を区別できません。計算で確かめます。

自分の売買記録で確かめる

MT5の取引履歴レポートやTradingView戦略の取引一覧(CSV)を読み込むと、損益の分布と連敗区間を計算します。ログインしなくても分析できます。

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